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地図で見る日本ハンドブック

スコシマロ, R.著,神田順子・清水珠代訳 2018. 『地図で見る日本ハンドブック』原書房,168p.2,800円.

 

最近,非常勤先の授業内容に限界を感じている。もう非常勤で大学の授業を始めて18年になるが,それまでかなりアカデミックな次元にこだわってきた。しかし,私自身がもともと物事を知らない人で,今更ながら少しずつ基礎的な知識をつけようとしている。そういう自分の変化にも合わせて,授業内容も変更していこうと考えていた。ともかく,日本という国と,世界との関係の基本的な事実を,基本的な社会地図でも見せながらの授業を思い立った次第。社会地図に関しては,私の出身大学の人たちの業績があるのでそれを活用しようとは考えていたが,モノクロ印刷で耐えうるかなどと考えているうちに,本書を書店で見つけた。著者はフランス人の地理学者だということで,フランス研究者の知人に聞いてみたが,日仏会館で講演をしたこともある人だという。ともかく,タイトル通り地図が多数掲載されていてコンパクトな本だったので,購入して読んでみることにした。

はじめに
自然環境と日本人の起源
 災害の多い列島
 日本列島への人の渡来と拡散
 主要な空間区分
 近代日本の構築
 相反する人口動態トレンド
縁辺の日本
 米作の日本
 稲作以外の農業
 漁業
 野生化する日本
都市の世界
 メガロポリス
 都市周辺部の変容
 都心人口の盛り返し
 ビジネス街
 都市の三つのプロフィール
 性風俗業とヤクザ
 美しい地区と雑然とした地区
 過剰な国土整備
 東京と大阪にみられる大都市圏の構築
 規格外の空間
経済と社会
 産業競争力の維持
 臨海部開発
 エネルギーのパラドックス
 再生可能エネルギーの発展
 汚染列島
 2011311日――参事の連鎖
 神社仏閣
 景勝地と観光
 政党分布
 女性の現況
 21世紀日本の貧困
 外国人
 自殺――日本病?
世界と日本
 日本の軍事力
 気候変動と日本
 貿易と事業の国際展開
 世界のなかの日本
まとめ
付録
 年表
 参考文献
 索引

日本列島の自然条件から始まって,典型的な地誌書かと思いきや,やはりヨーロッパ人というところが独自な雰囲気を醸し出しています。高校までの日本地理や一般読者向けの概説書とはちょっと異なる印象で,けっこう読みやすいというか,ストーリー性があって読ませる内容になっています。例えば,それは日本人にとっても常識なのかもしれませんが,日本政府は米作に手厚い保護をしてきた歴史があり,それは農村部の農業従事者を支える政策であり,それが自民党の厚い支持層を形成しているという。ヤクザの取り扱いも面白い。「野性化する日本」という項目については私がよく知らなかったことだが,限界集落や近い将来における自治体の消滅などが叫ばれているので,そうした放棄された村が荒れ果て野性化するというのは想像できる。しかし,そのことと都市部にも野生動物が出没するということが並列に論じられているところの論理的結びつきはイマイチ理解できなかった。
その他,授業で使えそうな地図としては,まず日本の植民地支配に関するもの。まさにこういう地図が欲しかったのです。それから漁業に関するもの。こちらは日本地図での漁港の分布と,世界地図で日本に海産物を供給している国の分布図。「東京とソウルを結ぶメガロポリス」という地図もその説明は十分ではないが面白い。「性風俗業とヤクザ」の項目では吉原の地図が掲載されています。さすがに,一度は行ってみないと授業では使えませんが。原子力発電所の分布図も使えますね。新エネルギーの分布図もあります。やはり東日本大震災と福島第一原発のことも大きく取り上げています。政党支持率の地図も政党ごとにあって面白い。それから,東アジアの軍事力比較とか,自衛隊の海外派遣の実態,日本の輸出入地図とか。なかなか授業の素材となる情報がそこそこありました。

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