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ラルースヴィジュアル版地図で見る国際関係

ラコスト, Y.著,大塚宏子訳 2017. 『新版 ラルースヴィジュアル版地図で見る国際関係』原書房,385p.5,500円.

 

イヴ・ラコストはフランスの地理学者。翻訳ではクセジュ文庫の『低開発諸国』があるが,なんと日本語出版も1962年。フランスに限らず超有名な地理学者だが,残念ながら以前紹介した,アルマン『私はどうして地理学者になったのか』にはインタビューが収録されていない。本書は地理学書も手掛ける原書房から2011年に出版されていたもので,以前から知っていたが,その値段から手を出せずにいた。今回,新版が出て,前回『地図で見る日本ハンドブック』を紹介する際にも書いたように,講義内容の変更を考えていて,本書を活用しようと思った次第。思った以上にボリュームがあり,読むのに時間がかかりました。

第1部 過去から現代までの地政学
第2部 アメリカ合衆国:困難をかかえる超大国
 アメリカ合衆国:世界システムの中心たる超大国
 あいつぐ紛争に直面する国
 21世紀の夜明け:新たな地政学的困難
 アメリカの「マニフェスト・デスティニー」:超大国でいつづけられるのか?
第3部 大国の地政学
 EUとNATO
 フランス:西ヨーロッパの十字路
 ドイツ:ヨーロッパの中央で
 イギリス:金融グローバリゼーションの選択
 イタリア:成立間もないヨーロッパの国
 スペイン:民族運動の危険
 ラテンアメリカ:不可能な統一の夢
 ブラジル:新「大国」への潜在力
 ロシア:重い遺産,いかなる未来の為か
 日本:驚異的な成長も現在は停滞中
 中国:いずれは世界一の経済大国か?
 インドネシア:もっとも人口の多いイスラム教国
 インド:多様性の中の統一
第4部 世界の緊迫地域
 アフリカ:新たな黄金郷?
 地中海:世界の大緊迫地帯
 バルカン半島:人々の情熱,諸帝国の利害
 旧ソ連周辺:かつてのライバル,新たな課題
 アフガニスタン:グレート・ゲームと部族の論理
 イラク,イランとペルシア湾:密接に結びついた緊迫地域
 イスラエルとパレスチナ:未だ打開策のない最重要課題

本書の原著タイトルは「地政学」。地政学については,英語圏でも批判地政学という名の下で1980年代後半から新しい動向があったが,「新しい地政学」というと,フランスにおける1970年代のラコストらによる議論を指す場合もあるらしい。「地政学」を冠する著書は日本でも今非常に多いが,本書は2011年の時点ではまだ「地政学」を冠することが日本の出版事情的にイマイチだったのか,一応表紙には「現代の地政学」とありますし,本文では地政学の語は頻出します。ただ,この概念を丁寧に議論するということはしていません。第1部で地政学の簡単な歴史がたどられ,時折,具体的な話から抽象的な議論に展開したりします。
いずれにせよ,本書は最近日本でも出版が続く地政学所の目的と大きく異なるものではなく,やはり世界で起こっている様々な問題は地図を見ながら,歴史を学ばないと理解できないという基本的な立場に立つものであるといえる。それでも,そこは世界的な地理学者が執筆したものですから,一つ一つの記述に含蓄が深く,読み応えがあります。読み応えがありすぎて,ちょっと一冊を通読すると頭がパンクしそうですが。特にアフリカに関することは私の知識がなさすぎて,完全に消化不良。ひょっとすると著者自身もまだ完全に咀嚼していないのか,あるいはうまく説明できていないのではと思ってしまいます。
ともかく,原著は2012年の版のようですが,この時点で世界の情勢について書かれたものであるという前提で,何度も読み返すことが必要なのかもしれません。私たちは難しい時代に生きていますね。なんとか,シンプルな世の中にならないものか。

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