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現代オリンピックの発展と危機1940-2020

 

石坂友司 2018. 『現代オリンピックの発展と危機1940-2020――二度目の東京が目指すもの』人文書院,272p.2,500円.

 

日本でその研究歴のすべてをオリンピックにささげてきた人はそれほど多くない。1976年の著者はスポーツ研究が盛んで,オリンピック研究者も多い筑波大学の出身で,その研究歴の多くをオリンピックにささげてきた研究者だといえるかもしれない。オリンピックを総括できる本をこれまで,ゴールドブラット『オリンピック全史』,ボイコフ『オリンピック秘史』と外国のものを紹介してきたが,本書は日本の研究者が書いたという意味でもその特徴がある。とはいえ,3冊の著者いずれもが,都市への効果ということをテーマの一つとして持っているという点で,読むべき一冊。

はじめに
第一章 オリンピックの誕生と伝統の創造
第二章 日本におけるオリンピックの受容
第三章 オリンピックと政治――ボイコットの時代
第四章 オリンピックとアマチュアリズム
第五章 オリンピックと商業主義
第六章 オリンピックは本当に黒字を生むか
第七章 オリンピックと象徴的権力
第八章 オリンピックレガシーの登場
第九章 2020年東京オリンピックの行方
おわりに

本書にはフランスの社会学者ブルデューの名前がよく出てくる。第七章のタイトルに「象徴的権力」が用いられているが,ブルデュー理論が根底の一つにあるようです。また,私が唯一持っているブルデュー本『メディア批判』のなかに,「オリンピック――分析のためのプログラム」という補論があることを知る。読み直そう。
本書が『オリンピック全史』や『オリンピック秘史』と異なるのは,「近代スポーツの発展は近代オリンピックと密接な関係を築いている」(p.26)という言葉に示されているように,近代スポーツ史という広い文脈でとらえているところにある。この視点は1981年の『反オリンピック宣言』にもあったものだが,本書ではそれが学術的な議論を受けているので,議論がさらに深堀されている。特にアマチュアリズムなどについての議論は深いし,政治や商業主義についても,どちらが正しい的な主張ではなく,データも示しながら,これまでこうした出来事があり,こうした議論がなされてきたということを示しつつ,議論が展開する。
6章では財政的な検討もいくつかの大会の事例で詳細になされており,第7章ではレガシーの話に移行する。ここでは,都市開発についても英語文献にかなり言及する形で議論されている。こうして,改めて本書の内容を振り返ると大して目新しいことは書いていないような気もしてくるが,『オリンピック全史』や『オリンピック秘史』が英語圏の文献に依拠することで一部は似たような記述になっていたのに対し,本書は関連する日本語文献に依拠しているため,かなり違った記述になっているという印象は強かった。特に私がまだ読んでいなかった多木浩二『スポーツを考える』など,スポーツ論やスポーツ研究の日本における層の厚さを感じさせる一冊だった。

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