« オリンピックと東京改造 | トップページ | オリンピック秘史 »

オリンピック,メガイベント関連文献(英語編6)

Andravovich, G., Burbank, M. J. and Heying, C. H. (2001): Olympic Cities: Lessons Learned from Mega-events
Politics,
Journal of Urban Affairs 23 (2): 113-131.
アンドラノヴィッチとバーバンクの共著論文は前にも紹介しましたが,彼らは北米の事例でオリンピック研究をかなり手掛けているようです。この論文も2001年という比較的早い時期の都市を文脈にした批判的研究です。この論文でも,1984年ロサンゼルス大会,1996年アトランタ大会,2002年ソルトレイクシティ大会と米国のオリンピックにこだわったているのは,米国ではオリンピック開催に公的資金を投入せず,基本的には民間活力で準備,運営をするということになっているから。まあ,ある意味新自由主義的な企業家主義的都市政策と理解できます。もちろん,招致から開催まで10年ほどかかりますので,この論文で対象としているのは,1970年代から2000年代まで,オリンピックに関わるところでいうとグローバル化や都市政策の変遷などの時代の変容があるなかで,それぞれの時代に開催されているので,それだけでも違いがあります。また,そもそもの都市の違い,夏季と冬季の違いがありますが,この論文では違いを確認しながらもそこに米国における共通点を見出していきます。米国といえど完全に民間活力ではなく,特にソルトレイクシティでは市や州などもかかわっているようです。アトランタでは,オリンピック関連の再開発に対して地域住民による反対運動がけっこうあったようです。ソルトレイクシティでは贈賄問題がありましたし,環境団体による地域住民との反対運動もあったようです。民間活力といえども,市民参加がほとんどないというところは共通しているようですね。

Lenskyj, H. J. (2015): Sport Mega-events and Leisure Studies, Leisure Studies 34: 501-507.
このレンスキーという研究者はかなり批判的なオリンピック研究者のようですが,なかなか論文を手に入れることができません。この論文も非常に短いもので,オリジナルの研究というよりは,レジャー研究の分野での状況報告です。著者はカナダのトロント大学で教育学の研究所に所属しているようですが,社会学がベースにあるようです。1980年代から研究をしているようですが,社会学のレジャー研究ではスポーツというテーマが周縁に追いやられ,そこで女性の問題をとりあげるなどもってのほかだという雰囲気があったとのこと。そもそもオリンピック研究は大学と提携した独特の研究発表の場や,IOCが絡んだものなどがあり,批判的な研究を受け入れる土台がなかなかできなかったということも指摘しています。そんななかで,彼女が2012年に編集したパルグレイブという出版社から出した『オリンピック研究のハンドブック』は批判的なエッセイのみを収録したものであるとのこと。「レジャー研究の調査は,スポーツ・メガ・イベントを批判し,レジャー・サービスを提供するにあたって社会正義という課題に政策立案者の注意を向けることによって,この不均衡に立ち向かうことができる」(p.506)と締めくくっています。

Short, J. R. (2008): Globalization, Cities and the Summer Olympic, City 12 (3): 322-340.
かなり以前から活躍している英国の政治地理学者によるオリンピック論文。以前から読みたかったがようやく入手できた。やはり読んでよかったと思える1本。まだ,こういう論文が何本かあるんだよな。何とか入手する手段を考えなくては。
さて,シンプルなタイトルで,テーマは明白ですが,内容は多岐にわたります。よく語られていることも多いですが,著者なりの特徴のある記述もいくつかあります。まずはオリンピックのテレビ放映権が回を追うごとに倍増しているということはよく知られていますが,IOCに支払われる全体の放映権における米国の割合が徐々に減少しているということ。最近はネット配信やオンデマンドなどで多様化するなか,競技中継にもお国柄が出ているそうです。その国が好きな競技や報道の仕方があり,多様化しているとのこと。また,「大会の都市化」という表現を使って,開催都市の再開発やイメージ作りなどが論じられます。大会に関わる費用対効果分析については随分ページを割いていて,その意味のなさが指摘されています。それから,オリンピックの開催都市になることがかなりのステイタスになるようで,他のイベントを引き寄せ,結局は集まるところに資本は集中し,そうでないところにはどう頑張ってもなかなか集まらないというまさに近年進行するグローバル化の不均衡拡大をオリンピックが助長しているとのこと。

|

« オリンピックと東京改造 | トップページ | オリンピック秘史 »

学問・資格」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« オリンピックと東京改造 | トップページ | オリンピック秘史 »