« オリンピック,メガイベント関連文献(英語編13) | トップページ | オリンピック,メガイベント関連文献(英語編15) »

オリンピック,メガイベント関連文献(英語編14)

Pitts, A. and Liao, H. (2013): An Assessment Technique for the Evaluation and Proportion of Sustainable Olympic Design and Urban Development,Building Research & Information 41 (6): 722-734.
この論文は、近年オリンピック大会開催に要求されている持続可能性に関して、その計画と都市開発における持続可能性を評価する手法を開発しようとしたものである。持続可能性というのは環境とセットであり、留意すべき項目が列記されている。1.大気汚染とオゾン層破壊、2.水資源、3.廃棄物と下水の取り扱い、4.騒音、5.都市の緑化空間、6.交通渋滞、7.都市のスプロール、8.遺棄された都市区域。一方で、評価に関わる項目については、上記8項目とは異なります。1.戦略的な開発の目標、2.マスター・プランと配置選択、3.エネルギー消費、4.水の管理、5.材料と構造、6.交通、7.大会開催後の利用、8.機能性、9.環境へのインパクト。この論文では、具体的な大会を評価したりはしていませんし、ここで提示されているのは、確かに定性的な内容を定量的に評価できるようなものですが、これですぐに何かに点数をつけるようなツールとして開発されているわけではない。むしろ、将来的な計画において留意すべき点という意味合いかもしれない。

Maenning, W. and Vierhaus, C. (2017): "Winning the Olympic Host City Election: Key Success Factors," Applied Economics 49 (31): 3086-3099.
やはりこういう論文あるんですね。オリンピックの開催都市はIOC委員の投票で決まることは知られていますが、そのプロセスではなく、結果的にどのような条件の都市が開催都市として決定するのかという研究。この論文以前にも似たようなものはあるようです。この論文では147の項目を用い、それらは以下の6つのグループに分けられます。1.経済決定要因、2.社会的・政治的・生態学的決定要因、3.観光・イメージ要因、4.インフラストラクチャー、5.オリンピック・スポーツ、6.招致のコンセプト。経済的なものとしては、GDP関係、輸出額、海外直接投資額、人口などが含まれます。社会的・政治的な側面として、IOCが好むのは自由、民主主義、市民権、グローバル化を推進する国家であるという。ということで、それらを指標化している団体や研究者の成果を利用している。また、この分類には生態学的なものも含まれるため、二酸化炭素排出量などの指標も含まれる。観光に関しては、外国人観光客数やホテルの客室数、観光客の消費額など。インフラについては、土木・運輸・通信といった指標。オリンピック・スポーツに関しては、オリンピック大会が都市持ち回りという性質から、近い過去の開催地が近くにある場合は不利であるということをダミーで入れたり、FIFAワールドカップなど他の国際大会は親和性を持つ。また、継続的な招致活動も有意にはたらく。招致のコンセプトについては、オリンピック村と競技施設との距離や、開催都市の8月平均気温や湿度なども含まれる。この論文では、この147項目に対して、59の都市についてデータを収集し、分析している。対象としているのは1992年から2020年までの夏季大会。なんと、このモデルは、8大会の開催都市を100%で的中している。特に効いていたのは、都市人口、中期のGDP成長率、政治的権利の発展、過去10年間で国際競技大会の開催などであり、一般的にいわれているように、都市圏の人口とオリンピック開催に対する支持率が大きく効いているという。しかし、将来的な開催都市の予想に関しては限界があると書いている。その一つには、最近IOCが作成した「アジェンダ2020」があり、それは持続可能性などを強調しており、これまで通り人口が多く経済規模も大きい都市がその条件を満たすとは限らないからだ。

Fyffe, I. and Wister, A. V. (2016): "Age Differences in Olympic Volunteering Experiences: An Examination of Generativity and Meaning in Life," Leisure Studies 5 (5): 638-561.
この論文は2010年バンクーバー大会を事例に、中年および高齢者ボランティアの経験を調査している。この論文では、「次世代を確立し、指導する関心」としての次世代育成能力generativity概念を参照している。そして、この概念は「人生の意味理論」と結びつく。この概念は元々エリクソンの心理社会発展の段階理論で登場したもので、コミュニティへの参加に対する動機を理解するために用いられた。オリンピックのようなメガ・イベントにおけるボランティアの経験は、固有な世代的経験を含む。
2010
年バンクーバー大会では、約2万人のボランティアが参加したが、この調査では45歳以上のボランティアを募り、結果的に255人の回答を得、46-59歳までが127人、60歳以上が128人、性別や未婚/既婚の別、健康、教育、就業の有無などの基礎データとともに、既存の研究によって指標化されている「人生の意味」「人生の目的」「命の尊厳」「自己評価」など項目が組み込まれている。結果としては、大会前と大会後で、高齢者(60歳以上)は所属感覚と人生の意味の関係が増し、中年(46-59歳)は自己評価と人生の意味との関係が増すという結果が得られている。その理由としては、中年世代は職場や子育て、高齢の親の介護などでコミュニティに関わることが多いのに対し、高齢世代は社会との結びつきが失われてきていることもあり、メガ・イベントが達成感や所属感覚、それに加えてナショナリズム的魂を高齢世代に提供するのだ。

Dyreson, M. (2013): "The Republic of Consumption at the Olympic Games: Globalization, Americanization, and Californization," Journal of Global History 8: 256-278.
これだけオリンピック関係論文を読んできても、まだまだ知らない優れたオリンピック研究者がいますね。彼はいくつかの著書と多くの論文を持っているオリンピック研究者のようです。専門は「運動学Kinesiology」となっていますが、ロサンゼルス大会を中心とした社会・文化・政治的研究です。冒頭では、ビーチバレーボールやマウンテンバイク(オリンピックの競技になったのは1996年から。以下同様)、スノーボード(1998)、トライアスロン(2000年)、BMX2008年)のようなカリフォルニア生まれの、ある意味見た目重視の新しいスポーツが、オリンピックを通じて世界中に拡散することを、世界のカリフォルニア化のような形で表現しています。読み始めは、そういう視点もあるのか、と面白いなと思いましたが、かなり歴史をしっかりと辿っていて、読み応えのある論文でした。米国で初めてオリンピックが開催されるのは1904年のセントルイス大会で、万博での開催でした。その次が1932年のロサンゼルス大会なわけですが、それまで、米国の文化的な中心といえばニューヨークであり、東海岸であったわけですが、1920年代、1930年代とカリフォルニアが「消費の共和国」のような形で台頭してくるといいます。それにはハリウッドの影響も大きく、またオリンピックで活躍する水泳選手が1920年代の大会で金メダルを獲得し、その後ハリウッド映画に出演する(『ターザン』のワイズミュラーは有名)というような感じです。米国のスポーツといえば、野球にバスケットボール、アメリカン・フットボールがあり、当初米国はこれらをオリンピックに売り込むことをしていたわけですが、これは成功しません。水泳は米国発祥ではありませんが、カリフォルニア州が水泳や陸上競技の拠点となっていきます。また、米国のオリンピック開催は、公的資金を投入せず、民間資本が基礎となっているのもよく知られていますが、そもそも組織委員会自体が政治ではなく、経済的有力者を中心に組織されるというところが米国らしいです。ですから、メディアや場所の売り込み、商品開発などが常に付きまとい、だからこそカリフォルニアがその中心になったといえます。ロサンゼルスはなんと1952年大会からずっと招致活動をし続け、ようやく1984年に開催が決まったとのことですが、メディアからは「ゴールド州」と呼ばれるほど米国のオリンピックがカリフォルニアに集中し、1988年のソウル大会ではかなりのメダルをカリフォルニア勢が獲得したといいます。ともかく、その後はビキニ姿で競技をするようなビーチバレーボールが、各国の開催国で披露され、カリフォルニア的なものが、アメリカ的なものを代表し、グローバルに展開していくことになった、というわけです。

|

« オリンピック,メガイベント関連文献(英語編13) | トップページ | オリンピック,メガイベント関連文献(英語編15) »

学問・資格」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« オリンピック,メガイベント関連文献(英語編13) | トップページ | オリンピック,メガイベント関連文献(英語編15) »