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転換点にたつオリンピック

新都政をつくる会編(2014):『意義あり!2020東京オリンピック・パラリンピック 転換点にたつオリンピック』かもがわ出版.

 

本書は編者である団体の機関誌に、20141月から8月にかけて掲載された「2020年東京オリンピックを考える」という連載をベースにして作成されたものである。2020年オリンピック・パラリンピック競技大会の開催が東京に決定したのは20139月だから、かなり早い段階で、さまざまな異議を申し立てる団体がいたことに驚かされる。本書においてはまず、招致段階での開催計画を検討し、それがいかにIOCの「アジェンダ21」に反しているかを告発する。さまざまなオリンピック批判の論調としては、IOCが各国のオリンピック委員会、ないしは組織委員会に求める要件が厳しいことから、IOCにも批判の矛先を向けるが、本書の論調はそうではない。「アジェンダ21」をまずは肯定した上で、東京大会の開催計画がいかにひどいかを訴えるのだ。
湾岸地区は特に「世界都市博覧会」の開催予定時期を頂点としたバブル期に投資・開発されたが、その後日本経済の失速により負の遺産となったもので、今回のオリンピックでようやくそこに再投資できるという目論みを指摘しているところは、これまでもあった議論である。その上で、本書では湾岸地区は災害時に液状化や津波の危険があり、もしその対策をするとすればさらに高額な公的資金が投入される、という認識の下、1964年のレガシーである駒沢競技場をなぜ活用しないか、にこだわっている。開催計画では、選手村から半径8kmに収まるコンパクト大会を謳っているが、その中途半端な8kmという距離は、単に国立競技場を含む距離であるという。駒沢まで含めれば10kmでいいのに、国立競技場は含めるが、駒沢は含めないという論理で8kmが決まったと推測している。なぜ、10kmの駒沢を差し置いて、それより遠方の調布(武蔵の森総合スポーツプラザ)に新設するのか。
本書で初めて知って驚いた事実は、国立競技場に関するものである。オリンピック開催が決定する前に、ラグビーワールドカップの開催が決まっており、その時点で国立競技場を立て替える計画になったということはしっていたが、ラグビーワールドカップの開催が決定する前の2011年段階に、解体された国立競技場の改修計画がされていたということである。しかも、ネット時代の怖いところで、久米設計が行ったという改修計画の報告書抜粋版がネットで公開されているのだ。
https://architecturephoto.net/33850/
それはともかく、2014年初めの時点で、開催計画は大きく見直され、その計画変更に市民団体の訴えが効いているという。当初、葛西臨海公園内に計画されていたカヌー会場は、日本野鳥の会の訴えによって隣接する駐車場内に建設されることになった。以下の目次でも示されているが,この本でもロンドン大会を手本にするようなところもある。ロンドン大会への批判までは至っていないことは確認できる。また,〈データ編〉にある札幌市の住民アンケートの資料が非常に興味深い。これは今進んでいる冬季大会の招致の話ではなく2020年夏季大会に対する招致に関するものである。こんなことをやっていたのに,冬季大会は招致に向けて進んでいるように思えるのはどういうことなのだろうか。ともかく,いろいろ勉強になる本でした。

はじめに
Part1
 民意なき立候補
 異議続出の開催計画
 計画から外された駒沢競技場
 アベノミクス゛第4の矢”
 偽装されたコンパクト
 施設見直しを実現した都民の力
 曲がり角に立つオリンピック
 東日本大震災から3年置き去りにされる被災地
Part2
 酷暑の中のオリンピック
 東京大改造計画で東京は
 はじまった施設見直し
 ロンドン大会に学ぶこと
 オリンピックの改革
(各界からの提言)
  2020オリンピック・パラリンピックを考える都民の会
  日本野鳥の会東京
  新建築家技術者集団東京支部
  神宮外苑と国立競技場を未来に手わたす会
〈データ編〉
 2020オリンピック・パラリンピックを考える都民の会 施設見直し提案
 オリンピック憲章とアジェンダ21(抜萃)
 招致活動の経緯
 都議会オリンピック推進対策特別委員会資料
 札幌市広報招致アンケート
 新国立競技場関連

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