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批判的スポーツ社会学の論理

影山 健著,自由すぽーつ研究所編(2017):『批判的スポーツ社会学の論理――その神話と犯罪性をつく』ゆいぽおと,214p.2,000円.

 

本書は影山 健氏の遺稿を含め、いくつかの文章をその教え子たちが編集したものである。影山 健(1930-2016)は、1988年夏季オリンピックに名古屋が立候補していた時に反対運動をしていた学者であり、体育学や教育学を専門としていた。1981年に出版された『反オリンピック宣言』の第一編者であり、編者には本書の編集に携わった岡崎氏が名を連ねている。本書に書かれた経歴を見ると、東京教育大学(現:筑波大学)の体育学部を卒業し、東京大学大学院の教育学で修士号を取得している。終了後は文部省の事務官を務めた後、名古屋大学、東京都立大学、愛知教育大学で教鞭をとっている。本書は以下目次に発表年あるいは執筆年を記したが,1980年代の文章に加え,2020年東京オリンピック招致中の2013年に書かれた文章を収録している。前半はオリンピック批判だが,後半は著者なりの批判の根拠となる,体育・スポーツ批判で構成されている。

はじめに(岡崎 勝)
I
 オリンピックそのものを問う
 第一章 東京オリンピック招致をめぐる問題点について(20135月)
 第二章 日本の社会とオリンピック(19848月『体育の科学』)
 第三章 「オリンピック」に反対する名古屋市民の論理と行動(19819月『朝日ジャーナル』)
 〈補録〉反オリンピックをテーマとした研究と実践の記録――『アンチオリンピックス』創刊号より
 ■オリンピックをぶっ飛ばせ!工作者影山健教授の歴史的軌跡(土井俊介)
II
 批判的スポーツ社会学の論理
 第四章 スポーツに未来はあるか(19832月『体育科教育』)
 第五章 チャンピオンシップスポーツと学校体育(19811月『学校体育』)
 第六章 協働的ゲームについて――ある実験結果の紹介(19857月『月刊高校生』)
 ■研究があり、実践がある。その高いレベルでの両立をいまこそ学ぶべき(山本芳幹)
III
 体育を根本から問う
 第七章 いまこそ、批判的体育学を!(1989年「批判的体育・スポーツフォーラム」原稿)
 ■影山体育学の核心とは何か(岡崎 勝)
◇書籍解説(土井俊介)
おわりに(山本芳幹)

1980年代前半の体育の状況といえば,ちょうど私がスポーツに打ち込んでいた時期に重なる。私は小学3年生から少年野球をはじめた。8歳の頃だから1978年だ。中学校3年間も野球部に所属していたので,15歳になるまで,1985年までやっていたことになる。まさにこの頃は,体罰あたり前,水分を取るのは休憩時間だけ,先輩・後輩の上下関係という風潮がスポーツを支えていた。学校でも悪いことをした反省には廊下に正座など,そういう指導がまかり通っていた。私の父親はテニスをしていたが,スポーツ全般をテレビで観戦するのが好きで,野球は子どもがやっていたので当然のこと,テニスや趣味でたまにやっていたゴルフ(わが家は階級的にはそういう部類ではないのですが),マラソン・駅伝や相撲もよく観ていました。サッカーはまだ主流ではありませんでしたが,バレーボールなども含め,テレビで放映されるスポーツなら大抵見ていた記憶があります(スポーツに限らず,将棋や囲碁も)。私が小学生の頃はまだナイキは主流ではありませんでしたが,アディダスやプーマといったスポーツウェアが流行りだして,スポーツをやる子でなくても,ジャージを競って購入して着ていたものです。1930年生まれの著者にとって,1970年代後半からは競技スポーツがメディアを通して社会に浸透し,商業化された競技によって海外のスポーツメーカーの商品が日本に氾濫するのを目の当たりにして,ある種の危機感を抱いたのかもしれません。
そして,著者は単に学術的な立場を極めるだけではなく,自分が対象とする「体育・スポーツ」というものが広く子どもたちに関わるものであるがゆえに,大学を飛び出し,教育の現場に関わり,さらには市民団体に参画しながら,一定の論理を持って批判的な立場を貫いたといえそうです。第三章の〈補録〉によれば,彼を中心に日本でも『アンチオリンピックス』なる雑誌が発行されていたようで,これは探してみる必要がありそうです。彼は愛知教育大学に属し,愛知県で長らく活動をしていて,愛知万博などにも関わっていたようです。そんな活動がありながら,東京の招致活動に対して,私自身も含めて人々は何をしていたのだろうか。開催側も過去の調査・研究,活動から何も学んでいませんが,市民側も一部の人を除いて過去の遺産が継承されていなかったのでしょうか。私が関心を持って知ることが遅すぎたようです。そんなことを痛感させてくれる本でした。

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