« 批判的スポーツ社会学の論理 | トップページ | 転換点にたつオリンピック »

親子で読む!東京オリンピック!ただし、アンチ

自由すぽーつ研究所編(2018):『親子で読む!東京オリンピック!ただし、アンチ』ジャパンマシニスト社,200p.1,800円.

 

本書はれっきとした単行本ですが、一応雑誌ということになっています。編者は先日紹介した影山 健さんの著作を編集した自由すぽーつ研究所の3人。団体名にはスポーツを謳っていますが、愛知教区大学での影山氏の教え子ということで、教育者であります。本書は「おそい・はやい・ひくい・たかい」という雑誌名の103号ということになっています。
https://japama.jp/oha_ichiran/
本書も単なるアンチオリンピック本ではなく、アンチの精神を子どもに教えるというコンセプトで書かれていて、他の号も子育て、学校、発達障害などのテーマが並びます。ちなみに、私は今、息子の通う小学校でPTAの役員をしています。このPTAでは、広報の第1号が役員紹介と教員紹介に充てられています。毎年テーマを決めて、プロフィール代わりに一言を入れていますが、今年度は「オリンピックに出場するとしたらどんな競技がいい?」という質問だった。私は迷わず「反オリンピック運動」と書いた。これが広報委員の中で物議をかもしたようで、会長経由で修正を要求された。子どもの夢を壊すから、みたいな言い方で諭されたのだ。まさにこれが影山氏のいう「オリンピックのイデオロギー」であり、本書もこうした世論に真っ向から対立するために執筆・出版されている。詳細目次を示したように、基本的には子どもの立場では思いつかないだろうが、子ども目線の素朴な質問に、編者たちが応えていくというスタイルをとっている。質問(Q)に対する答え(A)として、見開き2ページで簡潔な文章があり、ページをめくると「もっとくわしく知りたい人へ!」と題して4ページ程度の説明が続く。

はじめに 一度立ちどまって、冷静に見つめ直すために(岡崎 勝)
1
時間め 「オリンピック」ってなんだろう?
 Q1 オリンピックって、いつから始まったの?(山本芳幹)
 Q2 どうして最初、女性は出られなかったの?(岡崎 勝)
 Q3 オリンピックの選手って、どうやって決めるの?(岡崎 勝)
 Q4 オリンピックをやると、お金が儲かるの?(土井俊介)
 Q5 オリンピックは「平和の祭典」だって……ほんと?(土井俊介)
 Q6 ほんとうに「参加することに意義がある」の?(山本芳幹)
 Q7 ドーピングは、どうしてなくならないの?(岡崎 勝)
 Q8 オリンピックの種目は、どうやって決めるの?(山本芳幹)
 コラム① オリンピックに反対しづらい理由(岡崎 勝)
2
時間め どうなる? 「東京オリンピック」
 Q9 二〇二〇年のオリンピックは、どうして東京に決まったの?(土井俊介)
 Q10 東京オリンピックで、景気はよくなる?(山本芳幹)
 Q11 東京オリンピックが、学校生活にあたえる影響は?(岡崎 勝)
 Q12 ボランティアを募集しているけど、やったほうがいいの?(土井俊介)
 Q13 「おもてなし」って、なんだろう?(山本芳幹)
 コラム② 東京オリンピック、最大の問題は「予算超過」(土井俊介)
3
時間め 「スポーツ」に必要なことって?
 Q14 スポーツブランドが、かっこよく見えるのはなぜ?(岡崎 勝)
 Q15 スポーツは、小さいころからやっていたほうが有利?(岡崎 勝)
 Q16 勝つためなら、ちょっとくらい反則もOK?(岡崎 勝)
 Q17 やっぱり、スポーツは「結果」を出さないとダメ?(岡崎 勝)
 Q18 スポーツには「根性」が必要?(土井俊介)
 Q19 スポーツ選手がテレビCMにたくさん出ているのは、どうして?(山本芳幹)
 Q20 スポーツをすれば、健康になるの?(土井俊介)
 コラム③ 時代とともに変わってきた「スポーツ」(山本芳幹)
4
時間め 「障害」と「スポーツ」を考えよう
 障害者とトップアスリートに共通する生きづらさ−レクリエーションスポーツの可能性(熊谷晋一郎:小児科医)
 学校生活とパラリンピックに見る「平等」「公正」って?(山田 真:小児科医×岡崎 勝)
参考文献

例えば、これを私の息子(小学3年生)と一緒に読んだら、彼は理解してくれるのだろうか?実際にやって見なくては何とも言えないが、なんとなく完全には理解してくれないように思う。巻末の参考文献には、1972年から最新のものまで、一部関連書籍もあるが、オリンピックに関する日本語で出版された書籍が50以上も挙げられている。そのうち私が読んだのは8冊にすぎない。本書は学術書ではないし、これら参考文献の全てが学術書なわけではない。しかし、教育的言説の基本として、本書は一つ一つの事実に対し、その根拠となる文献を明示しているわけではなく、そして断定的な書き方をしている。本書の主張に私はほとんど賛同するが、この点のみは躊躇せざるを得ない。どうしても教育者の語り口として、断定的に子どもたちに教え込むという印象を感じてしまう。おそらく著者たちは教育現場ではそういう教師の立場性を軽減するような実践をしているのだと思うが、オリンピックというテーマに関しては、研究者ですら断定的に物事を語ることが難しい複雑さがあるなかで、仕方がないのだと思う。しかし、やはりこれまでの教育分野での実践を本書にも活かし、子どもとともに考えるオリンピックという立場を反映してもよかったのだと思う。

|

« 批判的スポーツ社会学の論理 | トップページ | 転換点にたつオリンピック »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 批判的スポーツ社会学の論理 | トップページ | 転換点にたつオリンピック »