【映画評】『ある画家の数奇な運命』と『STAND BY MEドラえもん2』
2020年11月22日(日)
川崎アートセンター(アルテリオシネマ) 『ある画家の数奇な運命』
立川のキノシネマで予告編を観て鳥肌が立った。私は2013年に発表した論文でドイツの画家ゲルハルト・リヒターについて書いた。この作品はタイトル通り若き画家が主人公なのだが,予告編の最後で彼が描く絵画,それがまさしくリヒターの「フォトペインティング」なのだ。帰って作品のウェブサイトを見ると,やはりリヒターがモデルとのこと。この作品に気づいた研究者仲間にも教えられたりして是非観なくてはと思っていた。しかし,時は過ぎ,ドイツ留学経験のある研究者がわが家に遊びに来た時,その作品の話になった。すでに,多くの劇場では上映が終了していたのだ。しかし,新百合ヶ丘にある川崎アートセンターではまだ上映中ということで,先週観に行く計画を立てた。しかし,前日に息子が学校で怪我をしたとかで呼び出され,当日の予定は変更になり,映画はキャンセルした。上映時間は遅くなったものの,ようやくこの日に観ることができた。
本作は米国アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『善き人のためのソナタ』の監督による上映時間3時間の大作。1932年ドレスデン生まれのリヒターだが,1961年に東ドイツから西ドイツに移住するというところは知っていたし,もちろん彼のフォトペインティングはよく観ているが,いろいろ分からないことも多かった。まず,私は彼のフォトペインティングに脱(反)因襲性を読み取っているが,彼はその作品でなした財産をもって自らはブルジョア的生活をしている,というところの意識はよく分かっていない。また,フォトペインティングが実際にどのように描かれているかもよく分からない。もちろん本作はフィクションではあるが,なんとなくその二つの疑問に答えてくれるものだった。映画によれば,第二次世界大戦により父親は職を失い,彼は親せきの家に預けられる。そこでは高校生のいとこ(?)が精神異常と診断され,断種手術をされてしまう。戦後両親のもとに帰るが,父親が自殺。芸術学校でその後結婚する女性と出会うが,作品中ではその産婦人科の父親がまさにいとこに断種の決定をした人物ということになっている。それはともかく,若くして妊娠した恋人に対し,その父親がうまく理由をつけて子どもをおろしてしまう。後に二人は結婚して西ドイツに逃れるが,その手術が原因で子どもができない。まあ,そんな感じの不幸の連続が描かれる。西ドイツでは芸術大学に入学し,そこで年中シルクハット(?)をかぶった教授が登場する。明らかに,ヨーゼフ・ボイスがモデルだと分かる。Wikipediaによれば,ボイスが常にシルクハットをかぶっている理由も映画中で語られていることが事実だと分かる。まあ,ともかく主人公はデュッセルドルフの芸術大学で新しい芸術を模索しているが,ボイス教授の一言で,自分がこれまで描いてきた絵画に立ち戻ることを決意する。しかし,真っ白のキャンバスの前に座る日々が続く。そして何気ないきっかけで生み出されるフォトペインティング。そのペインティングのシーンは,そのなぞを知りたがる鑑賞者にはたまらない。まあ,ともかく本作を見て,なんとなくリヒターのことを少し理解したような気になる。彼についてはドキュメンタリーもけっこう制作されていて,自らのウェブサイトでも公開されているので,暇を見つけて少しずつ見ようか。
https://www.neverlookaway-movie.jp/
2020年11月23日(月,祝)
府中TOHOシネマズ 『STAND BY MEドラえもん2』
CGのドラえもん。『STAND BY MEドラえもん』が作られた時から,観はしないのに,あの感動の物語がつぎはぎされてCGで脱臭されて,コミックをこよなく愛するファンへの冒涜だと思っていたが,さらに続編が作られた。しかも,6歳になった長女が観たいのだという。10歳にしてコミック愛も刷り込まれてきた長男はこの作品は観たくないという(でも,一作目は観たいのだそうだ)。観ず嫌いもなんなので,長女を連れて観に行くことにした。公開されたばかりなのに,鬼滅に押されて空席が目立つ。まあ,そもそも子ども向けに制作されたわけではないようで,入場者特典もないし,上映時間も96分と通常の映画ドラえもんより長い(鬼滅は117分だが)。とはいえ,6歳の娘は泣かされどころのシーンで号泣。途中でトイレに立ってしまったものの,しっかりと最後まで満喫してくれたようです。大人ののび太の声を,トヨタのCMの配役と同じ妻夫木聡だったことは嬉しかったし,脚本も悪くなかったけど,やはりCGの表情のぎこちなさは否定できません。
https://doraemon-3d.com/pc.html


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