【読書日記】『反「女性差別カルチャー」読本』
反「女性差別カルチャー」読本制作委員会(2022):『反「女性差別カルチャー」読本』タバブックス,69p.,1,000円.
『仕事文脈』という雑誌でオリンピック関連の記事が掲載されていて知った出版社,タバブックスから出版されたZINE。小ぶりで薄い,小冊子ですね。69ページでこれだけの人が書いているので,個々の文章は短いです。しかし,執筆者の皆さんが,短いながらの訴え方を心得た方ばかりで,ぐっと引き込まれる読み物です。
ハトシェプスト:小林えみ
お仕置き名刺:小山内園子
文化=刷り込まれた価値観を認識するために:関口竜平
うぬぼれ屋さん,この文章もたぶん自分のことだと思ってるんでしょ?:北村紗衣
「女性差別カルチャー」の背景にある,男同士の絆:濱田真里
「表自戦士」のフェミニズム・バッシング:能川元一
岐路に立つこと:河野真太郎
ミサンドリスト裁判:小川たまか
終わらない革命:隠岐さや香
私たちは屈しない――女性運動に対するSNS上の誹謗中傷:山田亜紀子
「女性差別カルチャー」を知り,脱するために読みたい5冊:松尾亜紀子
どこから,どうやって人は変わるのか:宮川真紀
メディア抗議と「フェミだんまり」批判:山口智美
「不愉快な思いをされた方がいたら申し訳ないんですが」――ホモソーシャル共同体入会への符牒:越智博美
性差別のない文化の夢を見る:松本典子
一回の映画好きにできる二,三の事柄(あるいはもっと?):渚
無題:清水晶子
反「女性カルチャー」読本 刊行にあたって
小林えみさんは,うちからも比較的近い分倍河原で「マルジナリア書店」を経営している方で,「よはく舎」という出版社もされています。ハトシェプストとはWikipediaによればエジプト王の王妃とのこと。紀元前1400年代という人物の名前を借りての創作。ちょっと私にはついていけません…
小山内園子さんは韓国翻訳者ということで,訳本を読んだことはありませんが,『エトセトラ』でも責任編集をつとめたりしていて,エッセイはいくつか読んだことがあります。本書のもとても面白いエッセイ。最近買うようになったいくつかのフェミニズム雑誌は大抵寄稿者のほとんどが女性ですが,本書は名前からして男性かと思われる(こういう時,名前から性別が判断できない,本来はする必要もないのですが,なんとなくもどかしさが残りますね)寄稿者が多いのも特徴。ホモソーシャルや男性によるバックラッシュなど,男に関わる話もいくつかあり,自分自身を内省する機会も提供してくれています。私自身,自分ではフェミニズム寄りだと思っていますが,そういう思い込みも怖いもので,ふとしたところで自分の男性性を問い直す機会は欲しいものです。
小川たまかさんもフェミニズム雑誌にたびたび登場します。今度著書をじっくり読んでみよう。松尾亜紀子さんはエトセトラブックスの経営者で,本書でもタイトル通り書籍紹介。同じ亜紀子つながりの山田亜紀子さんは現代書館の編集者とのこと。現代書館も松尾さんの紹介本に入っているように,フェミニズム系の書籍をよく扱っている。宮川真紀さんはタバブックスの代表とのこと。この通り,最近注目の出版業界は女性が次々と魅力的な活動をされています。私もおかげですっかり読書の傾向が変わりました。
その他は大学教員が多いですね。渚という方は映画ライターということで,この本のなかでは異質な文章ですが,私にとってはとても身近なもの。最後は今日の日本で重要なフェミニズム研究者(肩書は適切でないかもしれません?)の清水晶子さんが締めています。
具体的な話題から抽象的で,回答のない問いかけまで,思考を柔らかく豊かにしてくれる小冊子でした。なお,本書の売り上げは,本書制作のきっかけになった裁判の費用に充てられるとのこと。


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