« 2022年5月 | トップページ | 2022年7月 »

2022年6月

【読書日記】『反「女性差別カルチャー」読本』

反「女性差別カルチャー」読本制作委員会(2022):『反「女性差別カルチャー」読本』タバブックス,69p.1,000円.

 

『仕事文脈』という雑誌でオリンピック関連の記事が掲載されていて知った出版社,タバブックスから出版されたZINE。小ぶりで薄い,小冊子ですね。69ページでこれだけの人が書いているので,個々の文章は短いです。しかし,執筆者の皆さんが,短いながらの訴え方を心得た方ばかりで,ぐっと引き込まれる読み物です。

ハトシェプスト:小林えみ
お仕置き名刺:小山内園子
文化=刷り込まれた価値観を認識するために:関口竜平
うぬぼれ屋さん,この文章もたぶん自分のことだと思ってるんでしょ?:北村紗衣
「女性差別カルチャー」の背景にある,男同士の絆:濱田真里
「表自戦士」のフェミニズム・バッシング:能川元一
岐路に立つこと:河野真太郎
ミサンドリスト裁判:小川たまか
終わらない革命:隠岐さや香
私たちは屈しない――女性運動に対するSNS上の誹謗中傷:山田亜紀子
「女性差別カルチャー」を知り,脱するために読みたい5冊:松尾亜紀子
どこから,どうやって人は変わるのか:宮川真紀
メディア抗議と「フェミだんまり」批判:山口智美
「不愉快な思いをされた方がいたら申し訳ないんですが」――ホモソーシャル共同体入会への符牒:越智博美
性差別のない文化の夢を見る:松本典子
一回の映画好きにできる二,三の事柄(あるいはもっと?):渚
無題:清水晶子
反「女性カルチャー」読本 刊行にあたって

小林えみさんは,うちからも比較的近い分倍河原で「マルジナリア書店」を経営している方で,「よはく舎」という出版社もされています。ハトシェプストとはWikipediaによればエジプト王の王妃とのこと。紀元前1400年代という人物の名前を借りての創作。ちょっと私にはついていけません…
小山内園子さんは韓国翻訳者ということで,訳本を読んだことはありませんが,『エトセトラ』でも責任編集をつとめたりしていて,エッセイはいくつか読んだことがあります。本書のもとても面白いエッセイ。最近買うようになったいくつかのフェミニズム雑誌は大抵寄稿者のほとんどが女性ですが,本書は名前からして男性かと思われる(こういう時,名前から性別が判断できない,本来はする必要もないのですが,なんとなくもどかしさが残りますね)寄稿者が多いのも特徴。ホモソーシャルや男性によるバックラッシュなど,男に関わる話もいくつかあり,自分自身を内省する機会も提供してくれています。私自身,自分ではフェミニズム寄りだと思っていますが,そういう思い込みも怖いもので,ふとしたところで自分の男性性を問い直す機会は欲しいものです。
小川たまかさんもフェミニズム雑誌にたびたび登場します。今度著書をじっくり読んでみよう。松尾亜紀子さんはエトセトラブックスの経営者で,本書でもタイトル通り書籍紹介。同じ亜紀子つながりの山田亜紀子さんは現代書館の編集者とのこと。現代書館も松尾さんの紹介本に入っているように,フェミニズム系の書籍をよく扱っている。宮川真紀さんはタバブックスの代表とのこと。この通り,最近注目の出版業界は女性が次々と魅力的な活動をされています。私もおかげですっかり読書の傾向が変わりました。
その他は大学教員が多いですね。渚という方は映画ライターということで,この本のなかでは異質な文章ですが,私にとってはとても身近なもの。最後は今日の日本で重要なフェミニズム研究者(肩書は適切でないかもしれません?)の清水晶子さんが締めています。
具体的な話題から抽象的で,回答のない問いかけまで,思考を柔らかく豊かにしてくれる小冊子でした。なお,本書の売り上げは,本書制作のきっかけになった裁判の費用に充てられるとのこと。

| | コメント (0)

【映画日記】『神は見返りを求める』『百年と希望』

2022年625日(土)

立川キノシネマ 『神は見返りを求める』
𠮷田恵輔監督の最新作。主演はムロツヨシと岸井ゆきの。ムロツヨシ作品は最近数本観ることになったが,個人的にはあまり好きな俳優ではない。とはいえ,そのことが映画の評価を下げることにはならない。なんと,この映画に共感できる人物は一人もいないから。一昔前に,Twitterを代表とするSNSのあり方を大げさに描いてその功罪を訴えるような映画表現はよくあったが,本作はそれをYoutubeに拡大したものといえる。権力を持つ者が一方向的に情報を流すテレビに対して,Youtubeのようなメディアはそれを双方向にし,スマホしか持たないようなものにも発信の権利を与えるものに転換したわけだが,そこにも格差があり,またSNSと連動しているが故にバッシングやバックラッシュなどの報復,制裁などなどがあるということを誇張して描いている。まあ,その描き方にはやはり誇張があるのは否めないが,何といっても脇役の男性たちのその軽薄さの演出が素晴らしい。こういう役どころは皆さん自然に演じてくれるんですよね。本当に観ていてむかつきます。こういう悪意に満ちた姿がやはり人間の本性なのかと,考えさせられてしまいます。まあ,いずれにせよ大満足とまではいきませんでしたが,さすが𠮷田監督と思わせる作品。
https://kami-mikaeri.com/

 

2022年626日(日)

渋谷ユーロスペース 『百年と希望』
六年生の息子と渋谷まで観に行きました。今年で創立100年を迎える日本共産党を描いたドキュメンタリー。私自身,息子が年長の時に在籍する市立の保育園の保護者会の会長をした時に,ちょっとしたことを地元の共産党市議会議員に相談してから,知り合いになった。そのことが私の政治的な志向の大きな転換点になったわけではないが,コロナ禍で在宅勤務が増え,何気なく仕事しながらYoutubeを眺めるようになった。はじめは,子どもができて行けなくなったライブを,配信で観るようなことから始めたのだが,その内国会中継や街頭演説も観るようになった。国会での質問動画は,山添 拓さんや吉良よし子さんという共産党の若手議員の活躍が目立った。街頭演説ではれいわ新選組の山本太郎が圧倒的な存在感を示したわけだが,いろいろ繋がって見ていくなかで,源議員ではない池内さおりさんの存在や,国会ではなく東京都議会議員の池川友一さんなどが自身でやっているチャンネルの動画なども観るようになった。
本作品は志位和夫委員長や小池 晃さんのような共産党のトップの人たちはほとんど登場しない。本作で搭乗する場面のいくつかはすでにYoutubeで観たものであり,そういう意味では監督は私と近いアンテナで察知された人々やイベントで本作が構成されているといっていいかもしれない。そういう意味ではかなり身近なもの(とはいえ,私はネット越しで,監督はリアルで)であったともいえる。池内さんに関しては昨年の衆議院選挙で落選した様子の映像,池川さんに関しては家庭での様子,これらは私には観ることのできないもので,初めて知ることも多かった。しんぶん赤旗の様子も描かれたが,一部は『パンケーキを毒見する』でもあったし,共産党が主催するシンポジウムで編集長のお話を聞いたこともあった。
私も全く知らないところでは,60年以上党員をしているという茨城県に住む木村さんのお話し,宮城県で何度も国政に挑戦はするが落選続きの吉田さん,食糧支援の活動などもしている若い党員である黒田さん,いろんな人が登場します。ただ,欲を言ってしまえば,共産党は(よくよく考えたら自民党の方が全国のネットワークは強固なんだとは思うが),地元の党員,地方議会の議員,都道府県議会の議員,国会議員というローカルからナショナルへと至るネットワークがもう少し分かるような描き方も欲しかったとは思う。
なんと,思いがけずこの回は上映後に監督の舞台挨拶があった。西原孝至監督と,政治アイドル町田彩夏さんとが登壇した。町田さんの姿は映画にも少し登場するが,私が見ていた街頭演説やシンポジウムなどでもたびたび話をしていて,26歳だというが,しっかりした意見を持っていてすごい。パンフレットを購入し,お二人にサインをいただいて映画館を後にした。
http://100nentokibou.com/

| | コメント (0)

【映画日記】『からかい上手の髙木さん』『スープとイデオロギー』『はい,泳げません』

2022年611日(土)

府中TOHOシネマズ 『劇場版からかい上手の髙木さん』
NETFLIX
でアニメ版をやっていて,すっかり気に入った娘。山本崇一朗氏の原作漫画だが,なぜかスピンオフで主人公二人が結婚して娘ができた未来を描いた『からかい上手の元髙木さん』はコミックで二冊買っている。まあ,ともかくその原作の映画版なので,公開を知り,早速前売り券を購入。とはいえ,主人公は中学生で幼い子ども向けではないのでしょうか。子ども用の前売り券はありませんでした。それはともかく,早く観たいということで,舞台挨拶中継付きの公開初日に観ることにしました。劇場にはアニメオタクと思われる方々が多数いらっしゃいました。声優さんの舞台挨拶目当てでしょうか。
さて,今回の劇場版ですが,私はアニメ版を全編観たわけではありませんが,かなりオリジナル脚本のようで,アニメではお互い好き合いながらも中学生らしい,素直でない関係がじれったいほど続きますが,その辺りは劇場版。中学生最後の夏休みということで急接近してしまうという内容。娘も満足したようです。
https://takagi3.me/

 

2022年618日(土)

渋谷ユーロスペース 『スープとイデオロギー』
久し振りに一人での行動が許可されたので渋谷まで出かけた。ユーロスペースに来るのは何年ぶりだろうか。子どもが生まれてから一度は来たと思うが,そのことを思い出せないほど遠く感じる。でも,ほぼ何も変わらずその空間はあって,嬉しい気持ちも感じる。
さて,映画ですが,予告編を観ただけで観ておきたいと思った作品ですが,『かぞくのくに』の監督,ヤン・ヨンヒが自らの母親を描くドキュメンタリーでした。恐らく,作品化することを意識したわけではなく,老いておく両親を記録にとどめようという意識でカメラを回していたような感じがします。父親が亡くなり,大阪で一人暮らしをする母の元を東京から訪れる機会が増え,徐々に弱くなっていく母親。母娘間に確執を感じていた娘でしたが,一緒に過ごす時間が増えるなかで映画監督として母を理解する努力をしていったように感じる。そんな折に記者という日本人の配偶者を得ることとなり,その協力もあって母親の過去を知っていく。それは監督自身がテーマとしてきた日韓関係という大きなテーマを追求するうえでも非常に重要な作業になった,そんな作品。自分の存在のルーツの一端を知ることになった監督が,今後どんな作品を撮っていくのかにも興味がわく。
https://soupandideology.jp/

 

2022年619日(日)

立川立飛TOHOシネマズ 『はい,泳げません』
一時期スイミングに通っていた娘が観たいというので,2人で観に行った。実写映画は初めての娘なので,当日の朝にも再度予告編を見せて確認をした。主演の長谷川博己の演技はちゃんと見たことはない。予告編からも自分の息子を水の事故で亡くしたことが分かり,父親としては観ておきたいと思った。監督の渡辺謙作は,脚本を手掛けた『舟を編む』は観たが,監督作はあまり観ていない。と思ったら,2004年の『ラブドガン』は観たな。どんな映画かほとんど記憶にないが,単純に面白かったともつまらなかったともいえないような印象だけは残っている。
それはさておき,案の定というか,娘はなかなか進展しない淡々とした映像に退屈気味。まあ,気持ちはよく分かる。いわゆるお金をつぎ込んだ商業映画のように,飽きさせないような派手な仕組みはないが,かといって独立系作品のような独特な雰囲気は出せていない。有名な俳優を使って,テレビドラマほどテンポもよくなければ演出も紋切り型ではないが,人物描写にそれほど深みもない。綾瀬はるか演じる登場人物については映画ではそれほど掘り下げられていないので,原作を読んでみようかなという気にはなるが,思ったほど泣ける作品でもなかった。麻生久美子の存在感はさすがだなとは思ったが。
https://hai-oyogemasen.jp/

| | コメント (0)

【映画日記】『大河への道』『息子の面影』『教育と愛国』

2022年522日(日)

立川シネマシティ 『大河への道』
伊能忠敬の地図制作をモチーフにした映画があるということで,息子を誘い観に行った。立川志の輔の落語を実写化したもの。それにしてもよくできている話。映画としても十分に面白いものになっているが,落語でどうしゃべるのか,そんなことにも興味がわく。それにしても,最近中井貴一が元気だ。そして,一時期スクリーンから離れていたが,松山ケンイチが最近戻ってきたのが嬉しい。最近日本史に興味を持ち出した息子もすごく楽しんだようで,号泣していました。
https://movies.shochiku.co.jp/taiga/

 

2022年63日(金)

吉祥寺アップリンク 『息子の面影』
最近,在宅勤務をしながらも支持される作業が少なく,手を持て余している。ということで,その日は家庭訪問が兄妹の2件あったため,有給休暇をとることにして,午前中は映画を観ることにした。本当は『私のはなし 部落のはなし』を観たかったが,上映時間が長く,上映館では初回上映開始時間が遅いため,吉祥寺に行って,メキシコ映画を観ることにした。
メキシコといえばアメリカ合衆国との国境問題がある。本作でも息子が友人とともに国境を越えて米国で働きたいとバスに乗るが,行方不明となる。友人は死体で発見され,母親は息子を探しに国境地帯に行く。国境地帯の無法状態とそうした国境を越えようとする人たちを狙った強盗事件の頻出を描く。そして,結末がショッキングである。確かにそういうこともありえるよなあ,と妙に納得してしまう結末。基本はフィクションだが,どこまで現実に即した映画なのか。
https://musuko-no-omokage.jp/

 

2022年65日(日)

池袋シネリーブル 『教育と愛国』
こちらも息子と二人で観に行った。しんぶん赤旗日曜版にも監督のインタビュー記事も出ていた。もともとテレビ番組として制作されたものに追加取材を行って映画化されたものとのこと。前半は教科書の問題を,そこに介入してくる政治の問題として丁寧に深掘りするあり方が素晴らしかった。ただ,そこが追加されたものかもしれないが,日本学術会議の任命拒否問題や表現の不自由展などの有名な,ちょっと教科書から離れた大きな問題に広がっていってしまったのが残念。また,一部にはこの作品の事実の捉え方が偏っているという意見もあるというが,それは確かに否めない。まあ,私自身は同じ方向に偏っているので問題はないのだが,インタビュー対象者によって,批判すべき言葉を引き出す相手と,賛同できる言葉を引き出す相手が明確なのは確か。いずれにせよ,どんな分野でもまっとうな考えに基づいて行動している人の足を引っ張るというか(時に暴力的に)妨害しようとする勢力が普段は見えない形でどのくらいあるのかという怖さを感じさせる映画。そんな力が有り余っているんだったら,尖閣諸島でも暴力的に占拠してみたらどうかと思う。
https://www.mbs.jp/kyoiku-aikoku/

| | コメント (0)

【読書日記】清水晶子『フェミニズムってなんですか?』

清水晶子(2022):『フェミニズムってなんですか?』文藝春秋,251p.980円.

 

日本のフェミニストの著作をあまり読んできたわけではなく,研究者の名前を多く知っているわけでもない。ただ,この清水晶子さんが登場したのはなぜか印象深かった。英国大学で博士号を取得し,英語で著書を発表して東京大学の教員になるという,経歴が紹介されていた。しかも,当時私も耳馴染みのなかった「クィア研究」が専門としていたので記憶に残ったのかもしれない。とはいえ,すぐに日本語で読めるような論考がなかったために,本書の出版はなんだかワクワクした。とはいえ,本書のもとになったVOGUE誌のオンライン記事は知っていたものの読んでいなかった。ともかく,やはり紙の本の方がじっくり読めるのでと楽しみに読んだ。

はじめに
1 フェミニズムってなんですか?
2 フェミニズムの四つの波――フランケンシュタインから#MeTooまで。
3 フェミニズムにおける,性と生殖という「難題」。
4 「個人の自由」の真の意味を,フェミニズム問い続ける。
 対談Ⅰ フェミニズムに救われた二人の対話――長島有里枝×清水晶子
5 フェミニズムに(も)「インターセクショナル」な視点が必要な理由。
6 現代カルチャーシーンとフェミニズム――ドラマが教えてくれること。
7 女性リーダーに見る次世代リーダーシップのあり方。
8 性暴力を正しく理解するために。2010年からのエンタメと考える,性暴力とその奥にある問題
9 なぜ”ケア”は黙殺されてきたのか。コロナ禍に考える新しいケアのあり方。
10 日本の性教育の転換期に考える,真にヘルシーな性教育とそれがもたらす効果。
11 夫婦別姓に同性婚。課題山積の「結婚の不都合な真実」。
 対談Ⅱ 五輪開幕で考えたスポーツにおけるセクシズム――井谷聡子×清水晶子
12 セックスワークをフェミニズムはどう捉えるか。
13 フェミニズムから教育の多様性を考える。
14 フェミニズムは「中絶」をどう捉えるか。
15 「性」を支配するのは誰なのか?オルタナティブな性を考える。
16 誰も完全には自立していない――オルタナティブな「家族」のあり方と依存の受容。
 対談Ⅲ 共感の危うさと生き延びるための言葉――李琴峰×清水晶子
おわりに

おわりにに書いてあるが,著者はその『VOGUE』での連載の依頼時に,自分には一般向けにフェミニズムについて書くことを断ったという。目次からも分かるように,本書はフェミニズムに関わる多様なテーマが論じられている。私も本格的に著者の文章を読む前に,この人の議論は難解に違いないという先入観を持っていた。そういう人が一般書として(本書は文春新書の一冊である),多様なテーマについて論じるというのは意外とは思った。とはいえ,本書を読んでやはりフェミニズムってのはいろんなものの寄せ集めなのではなく,人間存在の根源に関わる問題であるからこそ,表面的には多様な形で表出するのだということを再認識させられる読書だった。
各章は短く,それらについて論じるのはここではやめておくが,印象的だったのが3つの対談だった。一つ目の対談は写真家の長嶋有里枝さんで,私も名前は知っていたものの,きちんと作品を観ていなかったので,少し驚く。それは対談している二人がなかなか壮絶な人生を送っていることと,そのことが現在の活動に関わっていることを知ることができる。二つ目の対談はこの読書日記でも時折出てくる井谷聡子さんだ。つい先日も確か,エトセトラブックスの企画で清水さんと対談をしているはずだ。本書に収録されているのがそれかと思っていたが,2021年7月にウェブに掲載されたものということで,エトセトラブックスのものとは違うようだ。この対談では,圧倒的に井谷さんがオリンピックの問題を説明していて,それらについてある程度の知識を持っている私としてはあまり目新しいものではなかった。三つ目の対談はお相手が台湾出身の作家で芥川賞を受賞している李さんである。この作家のことを私は知らなかったので,とても驚いたとともに,ここで紹介されるその小説の内容がすごく興味を引くものでびっくりした。私の妻は台湾人なので,李さんの存在は知っていたが作品はもっていないということで,機会があったら読んでみたいと思う。
ともかく,フェミニズムというのは現在私のなかで非常に大きな関心を占めていて,やはり人間社会の根源的な問題でもあり,人間社会にとってもその変革に対する大きな可能性を持っていると思う。とはいえ,本書でも紹介されているように,現在第四波まで進んでいるフェミニズムは世代間差異もあれば,内部分裂もある。私は極端な思想だとは思っていなくて,人間存在の根源を素朴に問い直すところから派生する思想であると思うのだが,それが故に現在自分の生に特段問題を抱いてない人にとっては不必要な考えであり,むしろその思想は現在の自分の(無自覚的だが優位に立つ)立場を揺るがせるものだと直感的に分かるのだろうか,拒否反応を起こすということもよく分かる。その一方で,何かしらの形で現在の自分の生に問題を抱える人にとっては,自分のことを救ってくれる,もしくはその考えが社会に浸透すれば,もう少し自分が生きやすい社会になるという希望を抱くことができるという意味で,全く対極の反応を示しえる考え方であるとも思う。

| | コメント (0)

« 2022年5月 | トップページ | 2022年7月 »