【映画日記】『ナワリヌイ』『ベイビー・ブローカー』『こちらあみ子』
2022年6月30日(木)
渋谷シネクイント 『ナワリヌイ』
本当に久しぶりに夫婦2人で映画を観に行った。そして,私が51歳だということもあり,「夫婦50割」を使ったのだ。私は顔写真付きで生年月日の入った証明書を持っていないし,妻は外国人でやはり「成瀬」姓ではなく,夫婦を証明できるものはない。ちょっとびくびくして受付に話をしたが,なんと自己申告制とのこと。2人で2,400円でした。投票日前にふさわしいテーマの作品を選んだ。
私はこの映画の存在を知るまで,ナワリヌイという人物については知らなかった。しかし,この映画で描かれるのはロシアがウクライナに侵攻する前の出来事であり,そこそこニュースにもなっていたらしいので,知っている人は知っているという内容。日本でどこまで報じられていたかは分からないが,本当にフィクションのようによく撮られ,編集されたドキュメンタリー映画。ナワリヌイはプーチンに対抗して大統領選挙に出馬すると表明した。SNSを有効に活用した政治運動をしていて,この作品で描かれたいくつかの集会の様子を見るだけでかなりの支持を集めていたことは分かる。そして,ある日ナワリヌイは飛行機で暗殺されかかる。この映画はその暗殺の実行犯を探る過程を記録したものである。実行犯の一人を特定するところまで達するわけだが,それにはブルガリアに住む一市民の功績が大きい。個人的にハッキングのようなデータ収集を趣味でやっていた(かなりの資材をつぎ込む),複数の容疑者を絞り込み,ナワリヌイに接触するのだ。ナワリヌイ側も当初はどういうたくらみで自分たちに接触してきたのかを疑いながらも,徐々に彼に全面的な協力を依頼していく。まあ,ともかく息をのむような展開で進展するわけだが,最終的に意を決してナワリヌイはロシアに帰国し,空港で逮捕され,未だに獄中にいる。しかし,その彼が帰国した飛行機を迎えようと空港に集結した支持者たちがものすごい数になり,警察は次から次へと検挙するという状況も描かれた。
ロシアの政治体制については知らない。ソ連が崩壊し,共産党がどうなっているのかも分からないが,ともかくナワリヌイのような個人が大統領選挙に立候補し,選挙で当選したら国のあり方は180°転回するのだろうか。強権的な独裁政治がそのような形で転覆するのであれば,それはそれで面白いというか脆弱な政治制度だともいえる。例えば,日本で山本太郎が総理大臣になるには,現行の選挙制度の下で国会議員の数を増やし,第一党にまでならなければならない。また,米国のような二大政党制の場合はまず,どちらかの政党内の選挙で代表に選出されなければならない(トランプがどのようにのし上がって代表になったのかもよく知らないが)。ともかく,いろいろ考えさせられる作品。
https://transformer.co.jp/m/Navalny/
2022年7月8日(金)
多摩センターイオンシネマ 『ベイビー・ブローカー』
是枝裕和監督がフランスに続いて,韓国で撮った作品。ぺ・ドゥナはすでに『空気人形』で是枝監督と仕事をしているが,その他のキャストもスゴイ。まあ,フランスで撮った時にもカトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュを使っているくらいなので,世界の映画界での信頼がすごいのだと思うが。とはいえ,そのフランス映画『真実』が個人的にはイマイチだったので,本作はどうだろうか。赤ちゃんポストに預けられた子どもを,その職員ととあるクリーニング屋がこっそりと盗み出し,お金を払ってでも自分たちの子どもとして育てたいというお客に売りさばくという商売をしている。『誰も知らない』のように恵まれない子どもを題材とし,『万引き家族』のように犯罪を描く。しかし,それらと比べて,本作は全編を明るい雰囲気が包む。全く血のつながりのない5人が赤ちゃんを引き取ってくれるお客を求め,また警察から追われ,旅する間に絆を深めるという希望のあるストーリー。まあ,いい映画だといっていいのではないでしょうか。
https://gaga.ne.jp/babybroker/
2022年7月9日(土)
立川キノシネマ 『こちらあみ子』
こちらは今村夏子という作家の原作を映画化したもの。タイトル通り「あみ子」という少女の物語。予告編では天真爛漫な感じで描かれていますが,正直言って救いようのないお話し。時代的にはだいぶ前で,広島県の田舎町が舞台になっているようです。多少ネタバレになりますが,尾野真千子と井浦 新演じる夫婦には兄と妹(あみ子)がいて,新しい命が誕生しようとするところから物語は始まる。しかし,この夫婦は再婚であり,上の兄妹は連れ子,そして夫婦の実子が生まれるという設定。しかし,この子は死産してしまい,家族は崩壊していく。そこにはあみ子が引き起こしたちょっとした事件があるのだが,妻はうつになり,兄は非行に走る。夫はそれとなく日常を過ごそうとするが,家族の誰に対しても手を差し延べない。あみ子が最後の方でポツンとつぶやくセリフがある。正確な言葉は忘れてしまったが,「なんでみんないつも教えてくれないのか」というのがある。一番大きいのはあみ子が「弟」だと思っていた死産した子どもが女の子だったこと。それだけでなく,要は周囲が「察しろ」「空気を読め」と諭す。あみ子は察することもできないし,空気を読むこともできない。最終的には父親からも見放され,田舎の祖母の家に置いていかれる。夫(=父親)はその後妻には寄り添うことにはなると思うが。映画としては難しい原作(原作は読んでいない)をそこそこうまく映像化したとは思うが,なんとも歯がゆい感覚を残す作品でした。


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