【映画日記】『カラフルな魔女』『落下の解剖学』『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』
2024年2月29日(木)
恵比寿ガーデンシネマ 『カラフルな魔女』
『魔女の宅急便』の作者,角野栄子さん。名前は知っていたが,作品自体をちゃんと読んだことはない。ただ,この映画を知って,予告編など観たら,なんと私の母親の一歳年上。うちの母も元気な方だが,さすがに最近はかなり衰えてきて,畑仕事は続けているようだが,それ以外は特にやることがないというか体が思うように動かない,そういう生活だと聞く。それに対して,角野さんはバリバリの現役であり,毎日のように朝から夕方までパソコンに向かって執筆活動をしている。前半はそういう今でも精力的な制作活動を見るだけで楽しかったが,後半はやはり盛り上げる展開が待っていた。角野さんは結婚間もなく,ブラジルに移住したのだ。1950年代後半の話である。
結局移民生活は数年だったということだが,そこで出会った少年のことを描いた『ルイジンニョ少年』という作品が彼女のデビュー作となる。そして,何十年もその少年とは音信不通だったのだが,最近連絡が取れ,そして彼が来日して再開するという形で,本作は展開する。まあ,その辺りはドキュメンタリーらしいクライマックスだが,やはり本作の魅力は鎌倉での彼女の生活を追う,そのほのぼのとした日常風景だろう。ともかく,なかなか彼女の作品に触れる機会はこの先も多くはないと思うが,非常に魅力的な作品をこれまで260点も制作しており,特に近年はそのブラジルに渡航した頃の自分をモデルに『イコ トラベリング』という作品を描いているそうで,こちらはトラベル・ライティング研究の題材として興味を持った。
https://movies.kadokawa.co.jp/majo_kadono/
2024年3月3日(日)
立川キノシネマ 『落下の解剖学』
11歳の息子を持った夫婦の物語だが,なんと13歳の息子と観に行った。私がこの手の作品を観るようになったのは大学生になってからだが,この方面ではあまりに早熟だ。さて,予告編でも観られるが,その家族は妻が作家,夫は教師をしながら小説を書こうとしている。息子は4歳の時の事故で視覚障害を追ってしまい,彼を慕う犬と一緒に暮らしている。ある朝,犬の散歩から帰ってきた少年は家の前に倒れている父親を発見する。雪深いロッジに住む家族だが,最近屋根裏部屋の改装を父親はやっていた。何らかの事故で落下したのか,自らの意志で飛び降りたのか,あるいは息子が不在のなか家に一緒にいた妻が殺したのか。物証と息子と妻の証言のみをめぐって裁判が行われるという物語。
この作品を観て,内容的には似ているところは多くないが,西川美和監督作品『永い言い訳』を思い出した。『落下の解剖学』で死んでしまった男が,妻と言い争いをするシーンがある。自分は小説を書きたいのだが,家事や育児に追われ,家計のために教師の仕事を続けている。その一方で妻は作家として成功していて次々と作品を出している。ただ,その作品だけで豊かな生活がおくれているわけではないようで,妻も傍らでドイツ語の翻訳の仕事もしている。なお,妻はドイツ人,夫はフランス人で夫婦は英語で会話をしている。この夫の言い分に私は自分の姿を見るようなのだ。私は大学に常勤の教員職を得られずに,研究は家計のための仕事と家事・育児の合間を縫って行っている。自分自身としては納得のいく研究活動ではあるが,この歳になってまだ一冊も自分自身の本を出せていない。論文は断片化された小さな時間の積み重ねで書けるが,一冊の本となるとまとまった時間が欲しいと思っている。とはいえ,本当に一冊の本が断片化された小さな時間の積み重ねでできるかどうかをやったこともないのだ。そう,『永い言い訳』の主人公もそうだが,自分がやりたいことをできない言い訳はいくらでも言えるのだが,じゃあ,本当にそのやりたいことというのに命がけで取り組んでいるのかといわれるとそうではない。むしろ日々の生活の雑事を言い訳にして,やりたいことを先延ばしにしているにすぎないのだ。まあ,そんなことを考えさせられた作品でした。
フランス映画にしては,非常に理路整然としていて,分かりやすく,息子も楽しんでくれたようです。
https://gaga.ne.jp/anatomy/
2024年3月10日(日)
府中TOHOシネマズ 『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』
毎年恒例となっている子どもたちとのドラえもん映画鑑賞。中学一年生になった息子もまだ付き合ってくれました。とはいえ,BUMP OF CHICKENを中心に日本の男性ロックバンドをよく聴いている息子にとっては,誰が主題歌を歌うのか,劇中の音楽,またエンディング・テーマの流れ方,そういうところにも映画を観る楽しみがあるようです。今回はVaundyというアーティストが主題歌を担当。劇中にも少し登場したり,エンディングもなかなかいい曲だった。さて,映画の内容ですが,「ストーリーはいいけど,いちいち陳腐なセリフがイマイチだった。」という息子の感想だけで十分。劇中で音楽が使われているというのも反則というか,いちいち涙腺にきますね。
https://doraeiga.com/2024/
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