« 【読書日記】安保破棄中央実行委員会監修『辺野古新基地は必ず止められる』 | トップページ | 【読書日記】藤原辰史編『第一次世界大戦を考える』 »

【映画日記】『彼方のうた』『ひとつの歌』『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』

2024年413日(日)

下高井戸シネマ 『彼方のうた』
私の研究者仲間の知人が映画監督だということで,ある時雑談的にその監督の作品の話をしてくれた。タイトルには何となく聞き覚えがあったものの,ウェブで見るのと声でタイトルを聞くのと印象が違い,私の知らない映画作品の話をしているのだと思っていた。しかし,その監督が一貫して『○○のうた』という作品を撮っているという話を聞いて,「ひょっとして『春原さんのうた』の監督ですか?」と聞いたら,そうだった。『春原さんのうた』も結局観なかったのだが,私がたまに行く分倍河原のマルジナリア書店で大々的に宣伝していたので作品の存在は知っていた。そんな杉田協士監督の作品が下北沢で一週間特集上映されるというので,観に行った。
その研究者仲間は一般受けのしない作風といっていたが,この日続けて2本の作品を観て,杉田監督の作品が一般受けはしない理由は二つあると感じた。この2作品(もう一作は『ひとつの歌』)に共通するのは主人公がストーカー的行為をするということ。もう一つは作品自体が作中で起きている出来事を語りすぎないこと。ここでは,陳腐な批評だが,この作品のストーリーを私なりに解釈して再現したい。小川あん演じる主人公は中学生の頃鉄道で痴漢にあった。その犯人とはホーム上で顔を合わせていて覚えていた。大人になった現時点で,眞島秀和演じるその犯人を見つけ,尾行して自宅まで突き止めている。その先の経緯は分からないが,その男が今度は主人公が勤める書店(撮影場所がマルジナリア書店で,店主の小林えみさんも本人役で登場する)を訪れる。その後,改めて場所を移動して,今度は聖蹟桜ヶ丘のキノコヤというお店で二人でビールを飲みながら話をする。このキノコヤを主人公が初めて訪れた時は,駅前で中村優子演じる女性にお店の場所が分からないといって連れて行ってもらう。残念ながらその時にキノコヤはお休みで,ランチを食べそこなった主人公はその女性の自宅にお邪魔してオムレツをごちそうになる。なお,このキノコヤの存在も私は知っていて,入ったことはないが,その隣のおにぎりカフェ「くさびや」には何度か食べに行ったことがある。なお,キノコヤも映画の上映会をするようなお店で,『春原さんのうた』のチラシは貼ってあったような記憶がある。
なお,主人公とオムレツの女性はそれからもたびたびこの女性の自宅でランチをする仲となる。また,眞島演じる男性の自宅も訪れ,その娘の脚本を主人公が読み,映画を撮影することとなる。
杉田監督の作品はストーカー的な執念さで関係性をもった二人が良い関係になるという意味において現実離れしている。また,作中の出来事を詳しくは説明しないことによって,その不自然なことを曖昧にすることができる。それはある意味で映像表現である映画特有の表現を優先しているものともいえる。また,杉田作品に特有なものの一つに長回しのシーンの多さもあるかもしれない。その不自然な形で親密になった二人の人物が言葉も交わさずに一緒にいる時間をそのまま映像として記録するのだ。そして,恐らく彼の作品にはスマートフォンの登場が極端に少ないように思う。かつては頻繁にあった二人の人間が同じ空間を共有する時の沈黙という間の悪さというか,それをそのまま表現している。携帯電話でウェブ閲覧などができるようになったばかりの時代は,近しい人と一緒にいる時間に片方の人が携帯電話を開いて見るという行為には一種のためらいがあったと思うが,今日はほとんどないといえる。すでに失われてしまった二人の人間観のかつてあった関係性を杉田氏の映画は記録に留めようとしているといえるかもしれない。
なお,上映後に監督と主演の小川あんさんの舞台挨拶があった。続いて上映された『ひとつの歌』の30分ほどの舞台挨拶に比べて,この時は5分程度のもので,2人ともほとんど話はできなかったが,会場からはなかなか鋭いディープな質問があり,続いて鑑賞することになった作品の理解をより良いものにしたと思う。個人的な印象ではあるが,主役の小川あんさんは顔が整いすぎていて,そこも現実離れした印象を受ける作品ではあった。
https://kanatanouta.com/

 

下高井戸シネマ 『ひとつの歌』
引き続き,2011年に制作された杉田監督の長編第一作を観た。こちらもある意味でのストーカー映画。主人公は聖蹟桜ヶ丘からバイクで東村山駅まで通い,駅のホームでポラロイドカメラを使って気になる乗客の写真を勝手にとっている。ある日,ホーム上で読書をする女性を撮影した後,駅から出ようとした時にホーム上での事故(電車による人身事故)のようなものを目撃する。すると,ホーム上でやはり写真を撮っていた,少し不審な行動をしていた男性が駅から急いで離れていく様子をみかけ,主人公はその男を尾行する。最終的には住宅地でその男と目があうシーンで一旦は終わる。その後,同じように主人公が東村山駅で撮影する人を物色していると黒ずくめの憔悴した女性がいて,気になって電車で追いかけると吉祥寺で降りて自宅に帰っていった。主人公はその女性の自宅をつきとめて引き返す。それから何度か吉祥寺に足を運び,どうやらその女性の職場(小さな写真館)を見つけ,自らのポラロイドで使用するフイルムの在庫はないかと話しかける。そこから,この写真感が開催する撮影会に参加することを通じて,その女性と仲良くなる。ついに彼女の自宅を訪れる機会があったのだが,彼女が意気消沈していたのは,母親を亡くしたのが原因で,その母親とは主人公がホームで撮影した女性であり,恐らくホームでの人身事故で亡くなったのだ。そして,その事故には主人公がその後尾行した男性が関わっていて,その男は逮捕されたのかもしれない。別の日に主人公がその男を尾行してたどり着いた住宅を再び訪れ,母娘が暮らす住宅に入り込むのだ。この家の主がその男で今は逮捕されて不在なのかもしれない。
こんな具合に,説明の少ない作品ではあるが,鑑賞者が想像力で補うことによってつじつまの合うストーリーを想定することもできる。しかし,やはりこの作品でもストーカー的行為によって出会った人物同士が仲良くなり,またそのことは悪意を持ったストーカーではなく,善意のもの,すなわちこの人と仲良くなりたいという誰でも抱く素朴な欲望,そしてほとんどの人がそれを現実世界では実現しようとはしない欲望がフィクショナルな物語世界のなかで実現される,そういうところに魅力を感じないでもない。
この回の終了後には,杉田作品を支えている撮影監督の飯岡幸子さんとのトークショーがあった。私はこの人のことを知らなかったが,自身もドキュメンタリー作品の監督を務めるなど,この日の話を聞いただけでも優れた映像作家であることが分かった。フロアからも同業者からの発言などもあり,非常に充実したトークショーだった。この日記の冒頭で,杉田監督作品は一般受けしないといったが(多くの作品がポレポレ東中野で上映されている),それはあくまでも一般的な観衆であり,この日下高井戸シネマに集まった多くの映画ファンを含めて,かなりディープに映画を愛する人には評価される作品を撮る監督だと思う。
http://www.boid-newcinema.com/hitotsunouta/staffcast.html

2024年414日(日)

立川シネマシティ 『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』
今年も娘と名探偵コナン映画を観に行きました。予約を取ろうと思ってTOHOシネマズのサイトを見ると,1日に複数のスクリーンで20回ほど上映していて驚く。といいつつ,息子も同じ映画館の別のスクリーンで別の映画を観てもらうことにして立川まで行った。今回の映画は函館が舞台。子ども向け作品でありながら,もちろん大人の鑑賞者もいて,上映時間も2時間近くあるが,飽きさせずに十分楽しめる。次回作も楽しみにしたい。
https://www.conan-movie.jp/2024/

|

« 【読書日記】安保破棄中央実行委員会監修『辺野古新基地は必ず止められる』 | トップページ | 【読書日記】藤原辰史編『第一次世界大戦を考える』 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 【読書日記】安保破棄中央実行委員会監修『辺野古新基地は必ず止められる』 | トップページ | 【読書日記】藤原辰史編『第一次世界大戦を考える』 »