【映画日記】『戦雲』『アイミタガイ』
2024年11月4日(月,祝)
日野市TreeHALL 『戦雲』
本作の監督である三上智恵さんは,日野市に講演をしに来たことがあり,聴きに行った。それ以前から私が見ているYouTube番組に沖縄の自衛隊配備の問題について話をしているのを聴いていたのでしていたが,しっかりと時間を取った講演と,また本作の映像素材からなる「スピンオフ」上映も観ていたので,その劇場版である本作は映画館で観るつもりでいたが,観ることができなかった。そういう意味でも,地元のイベントとして上映会があったのは本当に嬉しく,なんとか予定をあわせて,息子を連れて観に行った。
やはりというか当たり前だが,スピンオフの素材以外のものが沢山盛り込まれ,また削られたものもあった。かなり盛り込み感があった長い映画だったが,どの素材も重要で沖縄の離島の現状を伝えたいという意思を強く感じた。本作では沖縄の離島である,宮古島,石垣島,与那国島を中心にここ10年くらいで次々と自衛隊基地が建設された場所と,それに抗おうとする島の住民たちの姿を描いている。もちろん,基地はすぐにできるわけではない。東京に届く普通のメディア報道では,できてから伝えられるが,地元の特にそういうことに敏感な住民にはそういう情報が少しでもあれば伝わり,もちろんそれらを県外に伝え続けているジャーナリストでもある三上さんの耳には入るのだろう。本作で圧巻なのは,ドローンの発達も手伝って,自衛隊基地建設前後の敷地のビフォー&アフターが俯瞰的な映像で観られることだ。私は観ていないが,映画『Dr.コトー診療所』の撮影には与那国島が用いられ,豊かな自然が豊富な島々である。そうした森を切り開き,まっさらな基地が建設される。都市部のかつての賑わいが失われて放置されたままになっている地区がきれいに再開発されるさまというのは,その施設の利用が見込めないような無駄な開発でも,こんな私でも爽快感を感じたりするが,美しい自然(もちろん,その価値観は部外者である私の勝手な印象であり,実際に住む人にとっては別の感情もあるとは思うが)を破壊した上にできるきれいな整然とした施設だとしても,軍事施設というのははっきりいって何の役にも立たない。役に立つ時が来たら何もかも破壊されるのを待つだけ。そんなものを望むはずはない。しかし,一方ではこれを望む人がいるからこそ,次々と建設されるのだ。その理不尽さのみを感じさせられる作品。しかし,そこは丁寧な取材と撮影を続けている三上さんは違う。興味深いのは,住民が防衛省の説明会で,「自衛隊は住民を守ってくれない。先の戦争でも軍隊は沖縄県民を守らなかった」という沖縄の人が良くいう主張を聴いていた,傍聴者側に座っていた現地の自衛隊員が,意見した人の方に体を向けて,「私たちは皆さんを守ります」と何度も語っていたこと,また地元のお祭り(ボート競走)に自衛隊員も参加して,練習を重ねて受け入れられていくところ,また自衛隊員の子どもが,自分は数年で次の基地に移っていくことを知りながら,この島のことが好きだと語るところ,個人レベルでの人間関係はお互いの接し方で何とでもできるが,それを上の組織が壊していくのだ。それに抗わなければならない。
https://ikusafumu.jp/
2024年11月6日(水)
府中TOHOシネマズ 『アイミタガイ』
水曜日はいつも朝一から10:30までの授業をやって,15時からは私が所属する日本共産党の支部のLC会議に出席している。その間の時間,ここ数週間は選挙活動をしていたが,久し振りにフリーになったので,映画を観ることにした。ただ,何となく遠くには行きたくなかったので,近場のTOHOシネマズで黒木 華さん主演のこちらを観ることにした。けっこうキャストが豪華。安藤玉恵さんに西田尚美さん,田口トモロヲさんに風吹ジュンさん,草笛光子さんまで出ている。とはいえ,ストーリーはかなりベタな感じで,タイトルの「アイミタガイ」とはその地方の方言で,お互い様のような意味合い。誰かの何気ない行為が巡り巡って身近な人の小さな幸せにつながっていてというようなお話。現実世界でそういうことを実感した瞬間は大きな驚きをもってその喜びを味わうわけだが,これはフィクションだからね。そんなことをテーマにしなくても多くのドラマは限られた登場人物資源を有効に使いまわしているってのが私の持論。まあ,とはいってもフィクションと分かっていてこういう物語に没頭して暗い映画館で泣いてしまう,そういうのが私のひそかな楽しみでストレス発散(別にたまってはいませんが)であったりする。
https://aimitagai.jp/
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