【読書案内】池田浩士(文)・髙谷光雄(絵)『戦争に負けないための二〇章』
池田浩士(文)・髙谷光雄(絵)(2016):『戦争に負けないための二〇章』共和国,125p.,1,800円.
久し振りに分倍河原のマルジナリア書店に行ったものの,探していた本とモノはなく,手ぶらで帰るのももったいないので,購入した一冊。池田浩士さんは当然知っていましたが,単著を読んだことはなかった。共和国という出版社は最近知って,非常に刺激的な本を出す出版社で,本書も手に取るだけで美しい装丁で小ぶりだけどなんだかワクワクするので購入した次第。
はじめに
I 忠誠を尽くす
第一章 戦争は平和のためのたたかいです
第二章 自衛権はすべての国の基本的権利です
第三章 国を愛する心は国民を結ぶ絆です
第四章 徴兵制反対は臆病で卑怯な利己主義です
II 礼儀を正くす
第五章 戦争,それは科学技術と文明の進歩をもたらします
第六章 戦争,それは人間の心を美しく純粋にします
第七章 戦争,それは他者への信愛と自己責任を教えます
第八章 戦争,それはボランティア精神を生かし輝かせます
III 武勇を尚ぶ
第九章 私たちを脅かす敵は軍事力でしか防げません
第一〇章 軍備増強ほど確実な経済成長政策はありません
第一一章 機密保持と情報管理は完全でなければなりません
第一二章 それでも一国では国を守ることはできません
IV 信義を重んず
第一三章 日本の戦争はすべて平和と正義のためでした
第一四章 欧米諸国は侵略によって世界を支配してきました
第一五章 日本の戦争によって多くの国が独立しました
第一六章 戦後の日本は平和的に世界進出を果たしました
V 質素を旨とす
第一七章 戦後七〇余年,日本は一度も戦争をしていません!
第一八章 自由を尊ぶ日本はこれからも平和を大切にします!
第一九章 平和は一億総活躍社会によってこそ実現できるのです!
第二〇章 平和のための戦争を一億国民が支えましょう!
戦争に負けないために読みたい二〇冊
あとがき
本書を作者である池田さんは「絵物語」と呼んでいる。あとがきには「髙谷光雄さんの絵と私の駄文を交錯させてみたい。」(pp.122-123)とある。一章が,扉1ぺージ,文章と絵で見開き2ページ,引用1ページという4ページからなり,各部(I,IIと時計数字のもの)も扉1ページ+裏白の2ページという構成。
目次から分かるように,右派の歴史修正主義者のような主張が大真面目に次々と繰り出され,どう解読していいのか悩みながら読み進める読書。そうした言葉がそれらを否定する言葉なしに並べられると,それらを正当に否定する言葉が出てこない。おそらく本書は,過去の戦争の際に醸成された機運的なものを論理的に再現しようという試みだと思う。「ボタンの掛け違い」という表現があるが,戦争とはまさに何かのきっかけで権力者の思考が誤った方向に向かい,その思考が一定の論理的整合性を持つが故に,近くのものにも説得力を持って伝わり,最終的にはその思考が大多数を占めるという,そういう歴史的過程を論理的に再現する試み。
なので,読者はこの作品をアイロニー=反語として読まなくてはならないと私は思う。文字通り読まないような訓練を要する読書である。むしろ,言葉通りの意味を自分のなかで反転させる。そのことによって,私たち一人ひとりが戦争に抗い,権力に抗う力を手に入れる。巻末の読書案内も嬉しい。
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