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【読書日記】高松平藏『ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか』

高松平藏(2016):『ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか――質を高めるメカニズム』学芸出版社,187p.,1,900円.

 

本書の帯には著者の肩書を「ドイツ在住ジャーナリスト」と,「10万人の地方都市エアランゲン。全国平均2倍のGDP=経済力と小さく賢く進化し続ける創造力はいかに生み出されるのか。」と書かれている。私が日野市議会議員補欠選挙に立候補してほしいという要請があった後にブックオフで見かけたのが本書。自分としてどんな政策を打ち出すべきか考えていた時だったので,参考になるかなと思って購入して早速読んだ。日野市は19万人弱の人口だったので,それより小規模な都市でどのようなまちづくりがなされているのか,知りたかった。
ドイツといえば,地理学者にとってはクリスタラーの中心地理論で知られるように,一定の距離を保って独立した存在として発達した都市がイメージできる。ドイツでなくても,古くはローマ帝国がヨーロッパ中に侵攻していく過程で随所に陣を張り,それが広場となった。そして,その侵攻の経路を使って商人が物資を運び,広場で定期市が開催される。日本でも宿場町があったように,商人のような人が徒歩で移動する距離ごとに中心地ができて発展していく。
日本でも原理的には同じはずなのだが,やはり平坦でない地形上の理由なのか,例えば人口10万人のエアランゲンに対して日野市は20万人弱の人口を有する。しかし,日野市は東京大都市圏のなかで行政区画を引かれた一地方自治体にすぎず,日野市という行政界に社会としてのまとまりはないし,また他市と比べて中心性もない。日本の場合(私の場合は特に関東地方しか知らないわけだが)はなんだかんだで鉄道駅を中心に商業地が発達し,鉄道駅は,特急停車駅,快速停車駅と階層化され,それぞれが商業地の規模に対応しているといってよいと思う。日野市の場合,京王線では高幡不動駅,JR中央線では豊田駅がそこそこの規模の駅。とはいえ,高幡不動は高幡不動尊と多摩動物公園への乗換駅,多摩都市モノレールの乗換駅という観光地と乗降客数の規模はあるものの,不動尊への参道も規模は小さいし,駅ビルが日野市のなかでは比較的大きいという程度。豊田駅も駅の近くにイオンモールがあるだけであり,JR中央線やモノレールでアクセスも良い立川駅や,京王線でアクセスのよい聖蹟桜ヶ丘駅や府中駅,京王八王子駅まで足を伸ばせば数段豊かな商業施設群を利用できる。私は車を使わないのでイオンモール多摩平の森がどのくらいの集客を持っているのかは分からないが,日野市を独立した「都市」とみなすのはかなりの無理がある。
さて,それを前提としたうえで本書から何が学べるのか。

はじめに――400年間「最新」であり続けるまち
1章 ドイツのまちの捉え方
2章 クリエイティビティのエンジン
3章 コンパクトシティのアクティビティ
4章 まちと成長する企業の戦略
5章 コミュニティをしなやかにつなぐインフラ
6章 パブリックマインドが生まれるしくみ
7章 まちを誇るメンタリティ
8章 競いあい磨かれる,まちの価値
おわりに――お喋りな都市に宿る創造性

前半は,本書のタイトルにある「クリエイティブ」という言葉を特に意識なく読み進めた。もうすっかりなじんでしまっている言葉だと思っていたからだ。前半はとても面白かった。1章では,「2 まちを捉える鳥瞰的思考」と題して,この都市の統計調査の充実さを紹介している。さまざまな項目の調査を行い,この都市の状況を知り,課題を発見し,その解決に努める,というわけだ。そして,その解決は経済分野にとどまらない。ドイツはエコロジーの発明の地でもあるが,現在も環境意識の強い国である。経済最優先にならないように,環境へも配慮しつつ,市民社会のことも考える,そうした風土があるのだという。
2章はドイツにおける移民の多さ,そしてそれが故の「人口流動をまちの活力に」と論じている。そしてエアランゲンでは企業の社会的活動が活発だという。そして,市民も余暇時間をボランティアに費やし,ボランティアを組織として受け入れる「フェライン」という存在を本書では強調している。19世紀に増えてきたといういわゆるNPO団体で,この都市に740の団体があるという。日本の町内会のような地縁組織ではなく,それぞれテーマを持った関心で結びついた人々の団体だという。
3章はタイトルに「コンパクトシティ」を掲げているが,脱クルマ社会を目指し,自転車交通を優先するまちづくり,都市農園の人気,その都市の歴史を知る仕組みがしっかりしている,という内容だ。日本のコンパクトシティについてはあまり情報を持ち合わせていないが,新しい情報技術を最優先にしたスマートシティ的なものとの結びつきが強い気がしてあまりいい印象を持っていない。3章の民間企業の役割はなかなか日本で真似するのは難しい気がするが,4章で論じられる「コミュニティ・インフラ」としてのスポーツクラブ,協会,ローカル・メディア,祭りは十分に真似できる可能性があると思う。6章ではドイツらしい再生可能エネルギーの話題もあるが,いわゆる郷土愛的なプライドやメンタリティはなかなか難しい気もする。
後半は個々の記述が短く,物足りなく感じてきてしまったが,8章でついにクリエイティビティ論のリチャード・フロリダの名前が出てきてしまった。まあ,署名に「クリエイティブ」があるので,当たり前だとはいえるが,「都市間競争」の話に行きついてしまうのであった。これはやはりどうしても新自由主義的な発想との親和性が強く,一方で私が希求するようなさまざまなものを地産地消に変えていって,自動車交通に頼らない社会のあり方としてのコンパクトシティとは似て非なるものだと考える。とはいえ,本書から学べることも多く,コンパクトシティ論以外にもウォーカブルシティとか15分都市構想,自転車都市など,これまでちょっとうさん臭さを感じていてちゃんと読んでこなかった議論をしっかりと読んでいきたい。

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