【読書日記】雑誌『地平』2025年3月号
『地平』地平社,2025年3月9号,248p.,1,100円.
創刊号以来で購入した『地平』。今回は特集3「データセンターという怪物」を読みたくて購入した。現在,私が住む日野市で巨大なデータセンター建設計画が進んでいて,開発業者の好き勝手はさせないと市民団体が立ちあがって,勉強会を開催した。その際の講師が,本誌に寄稿している歌川 学さんだったのだ。講演の際に使われたレジュメは手に入るが,やはり活字で読める文章は置いておきたい。そして,もう一人の寄稿者はデータセンターがこのAI時代の社会に必要なのかどうなのかという全体を状況について知ることができると思った。
また,特集1も非常に魅力的だ。長崎の黒い雨訴訟について取材して書籍も出版した小山美砂さんが,ソビエト連邦時代に核実験場になった,現あじぇるばいジャンのセミパラチンスクの取材をしていることは知っていたので,その報告が読みたかった。また,特集2についても,治安維持法100年などといわれており,日本共産党員として知らなければいけないことがあると思う。
【News In-Depth】
小寺隆幸:本質的問題は消えていない──学術会議法人化法案のまやかし
吉田明子:電気代はなぜ高騰したか──日本最大の発電会社JERAの不正とエネルギー政策
木口由香:ミャンマー 「春の革命」を理解する
特集1 原子力の終活
松久保 肇:虚飾の原発──求められる原子力産業の終活
佐々木 寛:原発と対峙する新潟の市民──その歴史的文脈を概観する
池内 了:柏崎刈羽原発を動かしていいのか
まさのあつこ:フクシマ“廃炉”は可能なのか
小山美砂:セミパラチンスクの乾いた風に耳を澄ます
今中哲二:核融合発電という蜃気楼
特集2 生きている治安維持法
荻野富士夫:そもそも治安維持法は「悪法」だった
伊藤智章:もの言う自由を守るために──大垣警察市民監視事件
近藤ゆり子:市民vs 公安警察
青木 理:日本の公安警察2025(第1回)四半世紀の変容
特集3 データセンターという怪物
歌川 学:巨大データセンターと立地地域──脱炭素への逆行
ロイス・バーシュレイ:隠されるAIのコスト
注目記事
安田純平:シリアに平和は実現するか
八尋 伸:ルポ 解放されたシリアの収容所
会田弘継:トランプ2.0政権始動──内部抗争兆す新右派
ハミッド・ダバシ、解説=早尾貴紀:ニューヨーク・タイムズ紙は、反ユダヤ主義を報じても、ジェノサイドには触れない
小林美穂子:「人権」が忌避される世の中で―ある自治体の市民と市長の取り組みからの考察
笹山尚人:「労使自治論」の危険性
好評連載
小林美希:ルポ イバラキ(第3回) メディアのチェック機能はどこへ?
尾崎孝史:ウクライナ通信(第9回) 軍用車の墓場と化した国境地帯
小笠原 淳:第三者の記(第3回) メディアと警察
樋田敦子:ルポ 消えたい子どもたち──生きたいと思える社会へ(第3回) 終われないヤングケアラー
栖来ひかり:台湾・麗しの島だより(第9回) 皇民化政策の名残とどう向き合うか
今福龍太:いくつものフォルモーサへ(第2回) わたしの風景、あなたのためだけの
石田昌隆:Sounds of the World(第9回) ソウル・フラワー・モノノケ・サミット
書評
原口昇平:私たちが壁でなくなるために──ガザに関する、宛名を削除した書簡
まずはNews In-Depthとして掲載された三つの記事。日本学術会議の問題は継続的に考えたいし,JERAの問題はもっと広く知らせたい。TOHOシネマズに行けばあの過大広告をまだ垂れ流していて,JERAサンデーもやめていない。ミャンマーの問題もなかなか知る機会が少ないので,貴重な記事。この雑誌は本当に特集以外にも読みどころ満載。
さて,特集1。期待した小山さんによるセミパラチンスクの取材記は想像した以上に衝撃的な内容だった。この旧ソ連の核実験場は四国ほどの大きさで広島型原爆1,100発ものエネルギー量の核実験が,1949年から40年間にわたって456回も行われたという。閉鎖されて34年が経過するが,日本国内の平均的な放射線量の23倍の放射線が測定されているという。小山さんはこの地に住む家庭を一軒一軒訪ね歩き,過去の記憶や現在の生活の状況,そしてこれまでの政府の対応などについて丁寧に記載している。
池内 了さんは九条の会の世話人ということもあり,自然科学者としてさまざまな側面で発言されている方だということは知っていたが,2018年に新潟県原子力発電所事故に関する検証総括委員会の委員調査をされていたとは知らなかった。そして,その背景を知ることができるのが佐々木さんの記事で,池内さんの論考からは,こうした人がそうした要職に就くことの苦悩を知ることができる。今中さんという原子力の技術専門家による記事を入れているところも素晴らしい。知らないことが沢山あります。
データセンターを論じた特集3は2つの記事だけで少し寂しい感じはするが,知りたいことは知ることができました。治安維持法に関する特集2は知らないことが多かった。大垣市の風力発電をめぐる市民監視の問題は『しんぶん赤旗』でも報じられていたので,当事者とそれを報じた記者による記事を興味深く読んだ。また,公安警察に関しては連載という形で青木 理氏の連載の初回も掲載された。彼が,2000年に講談社現代新書で『日本の公安警察』を出していることも知らなかったし,未だに公安警察の実態を整理した貴重な本だという。この本を出した当時,青木氏は共同通信社の記者であり,現在はフリーのジャーナリストであって,公安との関りは変化した前提で書かれている。
注目記事も世界情勢に関わる興味深いものばかりだったが,私が非常に関心を持ったのが小林美穂子さんの記事だった。小林さんはつくろい東京ファンドの方で,群馬県桐生市の生活保護問題で地平社から著書も出しているが,今回は国立市の人権政策に関するものだった。国立市といえば,最近市長選挙があり,日本共産党も支援した若い市長が現職を破って当選したばかり。こういう構図では,現職市長がいわゆる自民党への逆風から革新市政の誕生と思いがちだが,人権政策に関してはかなり先進的な自治体だったというのだ。確かに,国立市といえば景観条例や大学文化都市というイメージがあり,また人口規模の割には毎週国立駅前でパレスチナ・スタンディングなども行われるなど市民の政治意識も高いように思う。そういった意味でも,自治体にはそれぞれ複雑な事情があるということの認識の重要さを再確認した。
いずれにせよ,毎月とはいわないが,今後も本誌には注目しなければならない。
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