【読書日記】志位和夫『Q&A共産主義と自由』
志位和夫(2024):『Q&A共産主義と自由――『資本論』を導きに』新日本出版社,149p.,900円.
日野市議会議員選挙の候補者となり,落選はしたものの30年近く勤めてきた会社を辞めて,本格的に日本共産党の活動をするようになったので,党の基本的な文献は読まなくてはならなくなった。本書の基となるYouTube動画は観た記憶があるが,昨年の総選挙から日本共産党が前面的に押し出すこととなった「共産主義と自由」というテーマに関しては,やはり書籍化された本書を読んで,改めて党の方針を頭に入れておく必要があるということで読んだ。読後の感想としては,やはりオンラインゼミという形式で,しかもQ&A形式であるということからさらっと読めてしまうところがいい点でもあり,短所でもあるかもしれない。
はじめに
序論──資本主義はほんとうに「人間の自由」を保障しているか?
Q1 「社会主義・共産主義」のイメージが変わるお話になるということですが?
Q2 「資本主義」や「社会主義・共産主義」とは経済の話なのですか?
Q3 そもそも資本主義はほんとうに自由が保障された社会なのでしょうか?
Q4 貧富の格差の拡大はどこまできているのでしょうか?
Q5 気候危機がとても不安です。危機はどこまできているのでしょうか?
Q6 社会主義への新しい注目と期待を感じます。世界ではどうでしょうか?
Q7 「『資本論』を導きに」が副題ですが、どういうことでしょうか?
Q8 「人間の自由」と未来社会について、日本共産党大会で解明がされました
第一の角度──「利潤第一主義」からの自由
Q9 そもそも「利潤第一主義」とはどういうことでしょうか?
Q10 「利潤第一主義」は資本主義だけの現象なのですか?
Q11 「利潤第一主義」はどんな害悪をもたらすのですか?
Q12 資本主義のもとでなぜ貧困と格差が拡大していくのでしょうか?
Q13 「あとの祭り」の経済とはどういうことですか?
Q14 どうすれば「利潤第一主義」をとりのぞくことができるのですか?
Q15 「利潤第一主義」から自由になると、人間と社会はどう変わるのですか?
Q16 「生産手段の社会化」と「自由」は深く結びついているということですね?
Q17 「生産手段の社会化」と「自由」を論じたマルクスの文献を紹介してください
第二の角度──「人間の自由で全面的な発展」
Q18 ここでの「自由」の意味は、第一の角度の「自由」とは違った意味ですね?
Q19 「人間の自由で全面的な発展」とはどういう意味かについて、お話しください
Q20 「人間の自由」についてのマルクスの探究の過程をお話しください
Q21 搾取によって奪われているのは「カネ」だけでなく「自由な時間」ということですね?
Q22 今の日本で、働く人は「自由に処分できる時間」をどのくらい奪われているのですか?
Q23 『資本論』では、「人間の自由」と未来社会について、どういうまとめ方をしているのですか?
Q24 第一の角度の自由と、第二の角度の自由の関係について、踏み込んでお話しください
Q25 「自由に処分できる時間」を広げることは、今の運動の力にもなるのではないですか?
第三の角度──発達した資本主義国での巨大な可能性
Q26 「利潤第一主義」がもたらすのは害悪だけなのでしょうか?
Q27 資本主義の発展のもとでつくられ、未来社会に引き継がれるものをお話しください
Q28 「高度な生産力」の大切さはわかりますが、生産力って害悪をもたらす面もあるのでは?
Q29 「経済を社会的に規制・管理する仕組み」とはどういうことですか?
Q30 「国民の生活と権利を守るルール」も未来社会に引き継がれていくのですか?
Q31 「自由と民主主義」についてのマルクスの立場、未来社会になったらどうなるのかについてお話しください
Q32 人間の豊かな個性と資本主義、社会主義の関係についてお話しください
Q33 今のたたかいが未来社会につながっていると言えますね?
Q34 旧ソ連、中国のような社会にならない保障はどこにあるのでしょうか?
Q35 発達した資本主義国から社会主義に進んだ例はあるのですか?
当日寄せられた質問から
当日の質問1 「生産手段の社会化」と協同組合との関係について知りたい
当日の質問2 恐慌を起こさない資本主義がつくられる動きがあると聞きます
当日の質問3 社会主義・共産主義に到達するために最も必要なものは何でしょうか?
読後少し経ったこともあり,こうして目次を眺めてみても,この質問に対して,一つ一つ何も見ずに私が答えられるかというとそうでもない。なので,本書の詳細についてここで説明することは諦めます。まあ,薄くて安い本ですし,YouTubeで動画視聴もできる内容なので,ここでは私の想うところを書きたい。
私は今回の選挙で,自身の肩書を「人文地理学研究者」とした。地理学者相手には「独立研究者」などといっていて,この「研究者」という表記にある程度のこだわりを持っている。まあ,大したことではないが,Twitterには以下のように書いた。「学者というのは大学や研究機関に所属して学会を中心に研究をする人。研究家は所属に限らず,学会ではなく出版会を中心に研究をする人。そして,研究者は大学や研究機関には属さないが,学会を中心に研究をする人。」私は多少出版社が出す雑誌や書籍でも執筆の機会があったが,継続的にはなく,当然収入も生計を立てられるほどではない。大学の先生でも出版会で活動されている方もいるが,そうした収入がなくても大学からの給料で生計は立てられる。学会を中心にというのは,執筆の場が主に学会が発行する学術雑誌ということになり,執筆活動が収入にはならない。そして,学会誌というのは査読制度を持っていて,書きたいように書けるわけではない。また,自分の分野やテーマでこれまでどんな研究がなされていたのかということを網羅的に把握した上で,自分の研究のどこが目新しいのか,説得的に示さなければならない。そういう意味において,志位和夫議長のような立場を私は「マルクス研究家」と呼ぶのが相応しいと思っている。とはいえ,志位さんの文章をすべて読んだわけでもないし,日本共産党も『前衛』や『経済』という雑誌を出版していて,それらもしっかり読んだことはないので,偉そうなことは言えないのだが。これらの雑誌がどれだけ学術雑誌に準じているかは確認しなくてはいけないとは思う。例えば,青土社の『現代思想』や岩波書店の『思想』などは極めて学術雑誌に準じていると思うからだ。
まあ,この私の考えは今後また日本共産党の書籍を読むことでアップデートしていきたいとは思う。いずれにせよ,本書でいえば,志位さんはマルクス周りの文書を丁寧に読んではいるのだが,では他のマルクス研究者が同じ文書をどう扱ってきたかについては問うていないということと,私の理解では,今回マルクスの文書から志位さんらが導き出した「共産主義と自由」というテーマは,現代日本での文脈において,「日本共産党の存在は,ソ連や中国を想起させ,また自由主義経済である資本主義の対極にある共産主義はやはり自由という観点でも対極にある,という理解を打ち破ろうとする発想」だと考えている。つまり,日本共産党が描く未来社会は,「共産主義には自由がない」という理解とは異なっている,ということを強調して,昨年の総選挙の際にそれを訴えの最前線に用いようと決定したのだと理解している。つまり,これまでも日本共産党は資本主義経済の下で一般的な労働者は自分が提供している労働力に対して対等な賃金は支払われず,資本家に「搾取」されているという理解を示してきた。つまり,対等な賃金を支払わせるのが労働闘争だと。それに対し,今回は奪われているのはお金だけではなく,時間も奪われているのだと主張している。つまり,労働者が苦しんでいるのは低い賃金だけでなく,長時間労働であると。場合によっては,時間当たりの賃金が低いために長時間労働をして時給が少しでもアップする残業代を賃金として加算することでなんとか生計を立てられるということだ。であれば,単に賃金アップ=時給の増額だけでなく,残業しなくても生計が立てられるだけでの賃金=日本共産党のかつてのスローガンの一つ「8時間働けば普通の生活を送れる」というもの延長線上として「自由に使える時間」の獲得を政策の前面に押し出すという意味だ。マルクスの言葉では「自由に処分できる時間」としているわけだが,まあ,この政策は非常に優れているとは思う。労働以外の時間ができれば,人々は何をするだろうか。私たちが望んでいるのは,趣味に使う,勉強をして自分を高める,さらに高度な労働のための技術を学ぶ,地域活動に使う,ボランティアに使う,家族のために使う。しかし,この資本主義社会が続く限りは,さらなる収入のための労働に充てる,株式などの投機に充てる,購買の浪費に充てる,ただひたすら時間の浪費をする,そんな人々も多いと思う。やはり,この「自由に処分できる時間」が有効に使用されるためには社会のあり方そのものの変容が必要のようにも思う。
そして,同時にこの「自由」の意味をもっと深く議論する必要があるようにも思う。
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