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【読書日記】志位和夫『Q&A いま『資本論』がおもしろい』

志位和夫(2025)『Q&A いま『資本論』がおもしろい――マルクスとともに現代と未来を科学する』新日本出版社,165p.,1,100円.

 

日本共産党の志位議長は、ここのところ継続的に学生向けのオンラインゼミを行っており、第2回目の『科学的社会主義Q&A学生オンラインゼミで語る』の出版が2022年に、第3回目の『QA共産主義と自由』が2024年に書籍として出版されており、いずれもこの読書日記で紹介している。本書はその第4回目のオンラインゼミということで、下記に示したように、29の質問に答える形で行われ、今回も書籍化された。『QA共産主義と自由』が青色の表紙なので「青本」、そして本書は赤色の表紙で「赤本」と称され、今年7月に参議院選挙が終わったこの時期に、全国の党員はこの青本、赤本をテキストに学習を進めるよう、指導されている。
ということで、私は周りの党員より購入する時期が遅くなってしまったが、読むのは2日くらいで読み終わってしまった。なお、このオンラインゼミのようすはYouTubeでも配信されている。3時間にわたる動画であるが、私の場合は事前にこの動画を視聴していたので、すらすら読めたということになる。また、一方ですでにこの読書日記にも紹介しているように、日本共産党の出版社である新日本出版の『新版資本論』の1冊目はすでに読み終えて、今2冊目に取り組んでいるし、また新日本出版の古典選書の一冊であり、『資本論』のエッセンスが詰まっているという『賃労働と資本/賃金、価格および利潤』も読んでいるので、特に「2、どうやって搾取が行われているのか?」は比較的理解が容易だったともいえる。

はじめに
ゼミナールを始めるにあたって
1
、『資本論』とはどのような本なのか?
Q1
 新入生歓迎運動で対話をしていると、「『資本論』を読んでみたい」という声が、けっこう返ってきます。海外ではどんなふうなのでしょうか?
Q2
 『資本論』はどのような本なのか。その特徴についてお話しください。
Q3
 マルクスは、『資本論』をどうやって書いていったのですか?
Q4
 今回のゼミナールの進め方についてお話しください。
2
、どうやって搾取が行われているのか?
Q5
 まずお聞きしたいのは搾取の問題です。この問題を考える前提として、いまの日本で本当に「搾取」ということが行われているのかどうか。ここからお話しください。
Q6
 どうやって搾取が行われているのかについて、お話しください。
Q7
 マルクスが『資本論』で行った搾取の秘密の「謎解き」とはどんなものですか?
Q8
 そもそも労働者とはどういう人たちを指すのですか? いまの日本では、労働者はどのくらいの搾取がされているのですか?
3
、労働時間を短くするたたかい(「自由な時間」を拡大するたたかい)の意味は?
Q9
 資本家は、どうやって搾取を拡大していくのですか。『資本論』ではどのような解明がされているのですか?
Q10
 そもそも労働時間はどのようにして決まるのですか?
Q11
 「資本の魂」という話がありましたが、マルクスが『資本論』を書いた19世紀のイギリスでは、資本はどういう「吸血鬼」ぶりを発揮したのですか?
Q12
 いまの日本でも過労死や「サービス残業」—「ただ働き」はひどいですね。
Q13
 労働時間短縮=「自由な時間」を増やすことは、みんなの願いです。その大切さについて『資本論』でマルクスが訴えたことをお話しください
Q14
 労働時間短縮は、まさにいまの日本の課題でもありますね。
4
、生産力の発展が労働者にもたらすものは何か?
Q15
 資本家が搾取を拡大していく方法として、「労働時間を長くする」という方法をお話しされましたが、それ以外にはどういう方法があるのですか?
Q16
 「生産力」の拡大ということが言われました。そもそも「生産力」とはどういうものでしょうか? 「生産力」の拡大というと、環境破壊という悪いイメージもありますが。
Q17
 資本主義のもとでの生産力の拡大が、労働者にもたらす害悪について、『資本論』ではどういう解明がされているのですか?
Q18
 いま言われた多くの問題は、そのままいまの日本の大問題ですね。
Q19
 資本主義の発展のなかで未来社会の要素がつくられてくると言われましたが、どういうことでしょうか?
Q20
 『資本論』では、環境問題についても突っ込んだ言及があると聞きましたが?
5
、貧困と格差拡大のメカニズムは?
Q21
 21世紀のいま、貧困と格差の拡大は、どこまできているのでしょうか?
Q22
 『資本論』では、貧困と格差が拡大するメカニズムをどのように解明しているのでしょうか。
Q23
 「産業予備軍」という話は、いまの日本にもつながる話ですね?
6
、社会の変革はどうやっておこるのか?
Q24
 社会の変革はどうやっておこるのですか? 『資本論』でマルクスが出した結論について、お話しください。
Q25
 社会を変えるには、客観的な条件とともに、主体的な条件が大切ということですね?
Q26
 『資本論』では、ここで、未来社会がどんな社会になるとのべているのですか?
7
、社会主義・共産主義で人間の自由はどうなるか?
Q27
 昨年のゼミは、『Q&A 共産主義と自由—「資本論」を導きに』にまとめられ、みんなで学習してきました。どういう点に力を入れてまとめたのか。ポイントを説明してください。
8
、『資本論』をどう学び、人生にどう生かしていくか?
Q28
 今日は、『資本論』第一部のあらましをお話ししていただきましたが、『資本論』をどうやって学んでいったらいいでしょうか?
Q29
 『資本論』を人生にどう生かすかについて、最後に一言お願いします

当然のように、日本共産党で長らく委員長を勤めた志位さんが出版する本は、党内部では基本的に称賛される。私は党歴が浅いので偉そうなことは言えないが、歴代の委員長は数多くの著作を発表している。日本共産党は科学的社会主義を党の理論的支柱とし、その科学的社会主義は単なる経済学や政治学の理論ではなく、社会変革のための運動も含むものであるがゆえに、聖書のような一冊の書物に集約はされていないが、「科学的社会主義」(まあ、マルクスの『資本論』が聖書のような存在と言えるかもしれない)を日本共産党は心のよりどころにしているといえる。
世界を見渡してもこういう政党はあまりないと思うが、少なくとも日本においてはこれほど徹底している政党は他にない。とはいえ、私は曲がりなりにも学術の世界に身を置いたものなので、日本共産党のこうしたマルクスに対する態度をまるごと受け入れるのは難しい。もちろん、マルクスのような19世紀の古典に直接あたることは非常に重要だと思う。日本共産党も『資本論』を聖書として扱っているわけではない。その辺りは以前紹介した不破哲三さんの著作のなかでもマルクスを神聖化しないように戒めている。しかし、なんだかんだいって学術の世界では、マルクスの古典を読むのは、その後のマルクス主義の文脈で「読み直す」というのが基本であり、またマルクスの真意を読み取る的な目的もやはり違和感を抱かざるを得ない。
まあ、それはともかく本書は初めてマルクスの思想、資本主義分析に触れる者にとっては学ぶことが多いだろう。目次に示したように、そもそもマルクスが生きたヨーロッパはどんな世界でどんな時代だったのか。そのなかで『資本論』はどのような意図で書かれたのか、本書は『資本論』の第1部のみを扱っているが、そこではどんな主題が扱われているのか、経済理論としての『資本論』とマルクスが参加していたインタナショナルを中心とする社会運動との関係はどのようなものか、そしてそうしたマルクスの教訓を現代社会にどのように活かしていくのか、という事柄が分かりやすく解説されている。
とはいえ、マルクス主義に先に接した私が一番魅力的に感じた「物象化論」にはほとんど触れていないのが残念である。以前紹介した斎藤幸平氏の『大洪水の前に』でも物象化論はかなり重要なものとして論じられていた。資本主義システムの浸透によって、人間の社会関係の在り方が根本的に変化させられた、というのがマルクスの商品論の重要なところで、まだ私は『資本論』のさわりしか読んでいないので、正確かどうかは分からないが、そうした社会思想的な意味合いについては、マルクス以降のマルクス主義者によって豊かに展開されるようになったのかもしれない。そういう意味で本書は、論の展開上、物象化論には触れず、搾取の仕組みに議論を集中させ、搾取を是正する過程で、労働時間の短縮と賃金の上昇という、日本共産党の政策に結び付け、さらには搾取をなくすという究極的な目標に向かって、資本主義から社会主義・共産主義へという未来社会への道筋を示す、という構成にしている、といえるのかもしれない。

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