【読書日記】ダバシ『イスラエル=アメリカの新植民地主義』
ダバシ, H.著,早尾貴紀訳(2025)『イスラエル=アメリカの新植民地主義――ガザ〈10.7〉以降の世界』地平社,303p.,2,500円.
私は訳者の早尾さんが勤める大学で非常勤講師をしている。今年度の春学期、大学へと向かう道すがらで何度も早尾さんの姿を見かけた。しかし、彼の著書も訳書もちゃんと読んだことがなかったので、なかなか声をかけられずにいた。本書の著者は『ポスト・オリエンタリズム』の著者でもあり、早尾さんの訳で2017年に翻訳が出ており、早尾さんのことを知る前にこの本のことは知っていたこともあり、まずは新しい本書を読むことにした。
なお、出版社のサイトから目次をコピーさせていただいたが、本書は『ミドルイースト・アイ』というウェブニュースの連載から、2023年10月7日以降のものを翻訳出版したもの。日付を書き加えたが、1ヵ月1,2回の執筆で、1年半の経過を執筆順にたどることができる。
1 欧米はいかにイスラエルを「再発明」しているのか 2023.10.28
2 イスラエルのプロパガンダ主要10点を論駁する 2023.11.12
3 「川から海まで」のスローガンを取り戻す 2023.12.2
4 米国の大学キャンパスにおけるパレスチナ支援活動を弾圧するシオニストの努力が無駄に終わる理由 2023.12.20
5 イスラエルの対ガザ戦争にはヨーロッパ植民地主義の歴史全体が含まれている 2023.12.29
6 ガザのおかげでヨーロッパ哲学の倫理的破綻が露呈した 2024.1.18
7 対ガザ戦争は、パレスチナ解放神学と福音派シオニズムの対立を浮き彫りにする 2024.2.5
8 評論家たちはいかにフランツ・ファノンの遺産を歪曲しているか 2024.3.5
9 ヘーゲルの人種差別的哲学がヨーロッパのシオニズムに与えた影響 2024.3.15
10 米国大統領選:バイデンとトランプは殺人コインの表裏である 2024.4.3
11 フランチェスカ・アルバネーゼを恐れるのは誰か? 2024.4.10
12 イランの反撃はイスラエルに警告を与えたが、焦点は依然としてガザにあるべき 2024.4.25
13 欧米はパレスチナの教育に対するイスラエルの攻撃に直接責任がある 2024.5.9
14 米国大学キャンパスにおける抗議運動――エドワード・サイードは、この瞬間を大切にしたことだろう 2024.5.20
15 ヒラリー・クリントンは大学キャンパスの抗議という潮の変わり目がもつ倫理的な力を理解できない 2024.6.10
16 ガザでのジェノサイドは国外イラン人の反体制派の終焉をいかに決定づけたか 2024.6.27
17 老化したバイデンとリベラル帝国主義の危機 2024.7.9
18 ドナルド・トランプ暗殺未遂はアップルパイ並にアメリカ的だ 2024.7.17
19 バイデンと同じくカマラ・ハリスはイスラエルの大量虐殺に全面賛同している 2024.8.8
20 コリー・ブッシュが人種差別と植民地主義の勢力に立ち向かった 2024.8.22
21 ハイファの隠された歴史が、静かで美しいパレスチナ映画のなかに姿を現す 2024.9.11
22 なぜイランはイスラエルに報復してこなかったのか? 2024.10.1
23 タナハシ・コーツはいかにしてリベラル・シオニズムから脱却したか 2024.10.17
24 米国大統領選挙で、なぜ有権者はファシズムと大量虐殺的シオニズムのどちらかを選ばなければならないのか? 2024.10.31
25 ニューヨーク・タイムズ紙は、反ユダヤ主義を報じても、ジェノサイドには触れない 2024.12.5
26 ジミー・カーター、歴史の流れを変えたピーナッツ農家 2024.12.30
27 ガザ・ジェノサイドの余興――テルアビブで『ロリータ』を観る 2025.1.18
28 仮面は外され、そしてトランプとイスラエルは地球を不動産に変えた 2025.2.10
29 イスラエルとアメリカの蛮行が歴史の負け組にあることを示す四冊の本 2025.3.10
30 マフサ・アミーニーの抗議はイラン政権と反対派、双方の失敗を露呈した 2025.4.2
31 トランプが異常なわけではなく、外国人嫌悪はアップルパイ並みにアメリカ的なのだ 2025.4.21
イスラエルとパレスチナの問題はエドワード・サイードの著作を好んで読んでいた1990年代から関心を寄せているつもりだった。しかし、それをオスロ合意までの歴史的問題として理解していたつもりになっていた、ということは以前もどこかで書いたと思う。それがまさに10.7でイスラエルとパレスチナの問題は終わったものではなく、むしろ強度を増して進行中で、もうどうしようもないところまできてしまったと感じる。そして、本書にあるように、それにはアメリカ合衆国の存在があまりにも大きい。
私は本当に本書などを最近読むに至って、自身の認識の甘さを思い知らされることになった。アメリカ合衆国は直接的な植民地支配はフィリピンなど限られた場所にしか展開しておらず、政治的な植民地支配ではなく、一時期「アメリカ文化帝国主義」論が盛んになったように、第二次世界大戦後に経済的、文化的に帝国としてふるまっていたと理解していた(ネグリとハートの『〈帝国〉』はまだ読んでいない)。しかし、それはこれまで私も知っている史実からも明らかのように、19世紀における欧州の政治的帝国主義とは異なるかもしれないが、圧倒的な軍事力をもってまさに帝国としてふるまい、植民地主義の思想で他国に介入してきたことが理解できた。それは本書刊行後のトランプ大統領の振る舞いによって誰の目にも明らかになってきたことではあるが、ちょうど第二次トランプ大統領が選出される大統領選挙を挟んで書かれている本書からは、それがトランプ大統領個人の問題ではないこともよく理解できる。いずれにせよ、正義や良心、正しさが通用しなくなったこの世界で、どのように圧倒的な武力を伴ったこの権力に地球市民が立ち向かっていくのかが問われている。


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