【映画日記】『壊れたセカイと歌えないミク』『メイク・ア・ガール』『アプレンティス』
2025年1月21日(土)
府中TOHOシネマズ 『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』
娘は特に初音ミクファンということではないが,この作品は観たいというので2人で観に行った。そもそもプロジェクトセカイというもの自体も分かっていないが,映画を観て分かった限りこのことで書きたい。この映画の舞台では,いわゆるメタバースなのか,マルチバースなのか,マインクラフトのようなゲーム上なのか,SNS的なものなのか,登場人物たちは実世界のほかに所属する「世界」を持っている。とはいえ,全ての人が複数世界の属するかどうかは分からない。本作では,音楽や演劇,遊園地などといった,趣味の団体,職場の団体という形でそれぞれの世界に属している。それぞれの世界に別の姿で属している初音ミクがいて,一方ではある世界で一人きり取り残されてしまったミクがいて,このミクが実世界に登場する。それらの「世界」で実在する人物がアバターを使っているかどうかは分からないが,初音ミクのような実世界には実在しない存在もいるようだ。そして,ミクが一人残された世界は実世界と無数の扉でつながっているのだが,実世界の荒廃とともにこの世界も荒廃し,それをどうにかするためにミクが実世界に登場するが,本作の登場人物たちが協力し合って音楽やダンスなどを通じて人々に元気を与えるというストーリー。まあ,難しいのか設定がいい加減なのか分からないが,なかなか合理的な理解には苦しむし,音楽やイベントに過剰な力を与えているのもまあアニメだから仕方がないとは思う。その一方で,エンドロールで私が20年ほど前にそこそこライブも行ってCDも3枚ほど持っているシンガーソングライター,拝郷メイコさんの名前を見つけた。帰宅してネットで調べるが,本人はあまり宣伝していない。でも,わずかにTwitterに過去のイベントの様子などが書かれていて,このプロジェクトセカイのなかの同じ名前のMEIKOとして活動はしているようだ。しかも,この映画のためということではなく,映画以外のプロジェクトとして実在するもののようだ。
https://sh-anime.shochiku.co.jp/pjsekai-movie/
2025年2月1日(土)
立川シネマシティ 『メイク・ア・ガール』
娘を家から連れ出す口実で,映画の日に映画を観ることにした。なかなか実写映画を観てくれないので,なんとか観ることになったアニメ作品。これまたなかなか難しい。主人公は高校生の男性であり,近未来を描いている。自宅や職場ではロボットが掃除などの業務を行っていて,街中では自動運転も普及している。主人公は高校生でありながら大学の教員などもメンバーにいるラボラトリでロボット開発やクローン開発などを行っている。主人公の母親が優れたエンジニアでこのラボラトリの研究員だったようだが,病気か過労によって早くに亡くなった。高校の友人の一言「彼女ができたら仕事が早くなった」という言葉を真に受けて,彼女=ロボットではなくクローンによる生物学的人間を製造する。しかし,主人公はそもそも彼女=恋愛対象であるという意味が分かっていない一方で,「0号」と呼ばれるこの女性は,恐らく頭脳にはAIが使われているのだろうが,愛情的な感情を少しずつ成長させている。この作品もそのSF的設定にどの程度注力しているのか判断しかねるが,結末としては結局主人公自身も母親にクローン的に製造された人間なのではないかと思わせられた。
https://make-a-girl.com/
2025年2月2日(日)
立川キノシネマ 『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』
この日の午後の予定が天候不良でキャンセルになった。この日は朝から外出していて,夕方からも別の場所で予定があったので,そのまま立川に移動して映画を観ることにした。都合の良い時間の作品を選ぶという制約のなか,外出先なのでスマートフォンを持っていない私は自由に映画を選ぶこともできず,なんとなくでこの作品になった。米国大統領に再びなったドナルド・トランプの半生を描いた映画がやっているという情報は持っていたものの,ドキュメンタリーかと思っていた。
始まってみると,それは俳優が若かりし頃のトランプを演じる劇映画だった。細かい時代設定はちゃんと確認していないが,カーターやニクソンが大統領をやっていた時代なので,1970年代が中心か。ファッションも含めてニューヨークの都市風景などなかなか時代の雰囲気はよく再現されているし,映像加工の違和感もあまりない。結論としては,このトランプという人物はほとんど何も持たない人で,多くのものを人からの受け売りだということだ。不動産業としてのトランプはすでに父親の代でそこそこの規模にはなっており,彼の事業が成功していく背景には弁護士のロイ・コーンの存在が大きい。彼がトランプに教え込んでいた格言を後のトランプはあたかも自分のものであるようにジャーナリストに語る。トランプは酒と煙草とセックス,ドラッグの文化であるパーティの場に足繁く通い,自身の事業でカジノも作るが,この時代を象徴するようなこうしたセレブ的文化に関心を持っているようには描かれていない。事業は拡大するが一方で膨大な借金も抱え,自宅は豪勢だが,金持ちを目指しているようにも思えない。唯一彼の原動力が「取引」であり,最後のシーンのジャーナリストとのインタビューの中でも「取引の芸術」なんて言葉があるように,何かと取引することを通して自分が優位に立つ,それだけが彼の欲望なのだろうか。なんだか観ている方も空しくなる映画。それにしても,こうした一世代二世代前に栄光を味わった人物がこの21世紀に大国のトップになるとは,なんとも納得しがたいものがある。
https://www.trump-movie.jp/
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