映画・テレビ

【映画日記】『壊れたセカイと歌えないミク』『メイク・ア・ガール』『アプレンティス』

2025年121日(土)

府中TOHOシネマズ 『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』
娘は特に初音ミクファンということではないが,この作品は観たいというので2人で観に行った。そもそもプロジェクトセカイというもの自体も分かっていないが,映画を観て分かった限りこのことで書きたい。この映画の舞台では,いわゆるメタバースなのか,マルチバースなのか,マインクラフトのようなゲーム上なのか,SNS的なものなのか,登場人物たちは実世界のほかに所属する「世界」を持っている。とはいえ,全ての人が複数世界の属するかどうかは分からない。本作では,音楽や演劇,遊園地などといった,趣味の団体,職場の団体という形でそれぞれの世界に属している。それぞれの世界に別の姿で属している初音ミクがいて,一方ではある世界で一人きり取り残されてしまったミクがいて,このミクが実世界に登場する。それらの「世界」で実在する人物がアバターを使っているかどうかは分からないが,初音ミクのような実世界には実在しない存在もいるようだ。そして,ミクが一人残された世界は実世界と無数の扉でつながっているのだが,実世界の荒廃とともにこの世界も荒廃し,それをどうにかするためにミクが実世界に登場するが,本作の登場人物たちが協力し合って音楽やダンスなどを通じて人々に元気を与えるというストーリー。まあ,難しいのか設定がいい加減なのか分からないが,なかなか合理的な理解には苦しむし,音楽やイベントに過剰な力を与えているのもまあアニメだから仕方がないとは思う。その一方で,エンドロールで私が20年ほど前にそこそこライブも行ってCD3枚ほど持っているシンガーソングライター,拝郷メイコさんの名前を見つけた。帰宅してネットで調べるが,本人はあまり宣伝していない。でも,わずかにTwitterに過去のイベントの様子などが書かれていて,このプロジェクトセカイのなかの同じ名前のMEIKOとして活動はしているようだ。しかも,この映画のためということではなく,映画以外のプロジェクトとして実在するもののようだ。
https://sh-anime.shochiku.co.jp/pjsekai-movie/

 

2025年21日(土)

立川シネマシティ 『メイク・ア・ガール』
娘を家から連れ出す口実で,映画の日に映画を観ることにした。なかなか実写映画を観てくれないので,なんとか観ることになったアニメ作品。これまたなかなか難しい。主人公は高校生の男性であり,近未来を描いている。自宅や職場ではロボットが掃除などの業務を行っていて,街中では自動運転も普及している。主人公は高校生でありながら大学の教員などもメンバーにいるラボラトリでロボット開発やクローン開発などを行っている。主人公の母親が優れたエンジニアでこのラボラトリの研究員だったようだが,病気か過労によって早くに亡くなった。高校の友人の一言「彼女ができたら仕事が早くなった」という言葉を真に受けて,彼女=ロボットではなくクローンによる生物学的人間を製造する。しかし,主人公はそもそも彼女=恋愛対象であるという意味が分かっていない一方で,「0号」と呼ばれるこの女性は,恐らく頭脳にはAIが使われているのだろうが,愛情的な感情を少しずつ成長させている。この作品もそのSF的設定にどの程度注力しているのか判断しかねるが,結末としては結局主人公自身も母親にクローン的に製造された人間なのではないかと思わせられた。
https://make-a-girl.com/

 

2025年22日(日)

立川キノシネマ 『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』
この日の午後の予定が天候不良でキャンセルになった。この日は朝から外出していて,夕方からも別の場所で予定があったので,そのまま立川に移動して映画を観ることにした。都合の良い時間の作品を選ぶという制約のなか,外出先なのでスマートフォンを持っていない私は自由に映画を選ぶこともできず,なんとなくでこの作品になった。米国大統領に再びなったドナルド・トランプの半生を描いた映画がやっているという情報は持っていたものの,ドキュメンタリーかと思っていた。
始まってみると,それは俳優が若かりし頃のトランプを演じる劇映画だった。細かい時代設定はちゃんと確認していないが,カーターやニクソンが大統領をやっていた時代なので,1970年代が中心か。ファッションも含めてニューヨークの都市風景などなかなか時代の雰囲気はよく再現されているし,映像加工の違和感もあまりない。結論としては,このトランプという人物はほとんど何も持たない人で,多くのものを人からの受け売りだということだ。不動産業としてのトランプはすでに父親の代でそこそこの規模にはなっており,彼の事業が成功していく背景には弁護士のロイ・コーンの存在が大きい。彼がトランプに教え込んでいた格言を後のトランプはあたかも自分のものであるようにジャーナリストに語る。トランプは酒と煙草とセックス,ドラッグの文化であるパーティの場に足繁く通い,自身の事業でカジノも作るが,この時代を象徴するようなこうしたセレブ的文化に関心を持っているようには描かれていない。事業は拡大するが一方で膨大な借金も抱え,自宅は豪勢だが,金持ちを目指しているようにも思えない。唯一彼の原動力が「取引」であり,最後のシーンのジャーナリストとのインタビューの中でも「取引の芸術」なんて言葉があるように,何かと取引することを通して自分が優位に立つ,それだけが彼の欲望なのだろうか。なんだか観ている方も空しくなる映画。それにしても,こうした一世代二世代前に栄光を味わった人物がこの21世紀に大国のトップになるとは,なんとも納得しがたいものがある。
https://www.trump-movie.jp/

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【映画日記】『推しの子 The Final Act』『侍タイムスリッパ―』『ありきたりな言葉じゃなくて』

2024年1221日(土)

府中TOHOシネマズ 『推しの子 The Final Act
『推しの子』はアニメ化されるかどうかという時期に娘が注目していた。アニメ化された頃,作中の設定が木村花さんの事件に似ているところがあるということで批判が相次いだし,個人的には小学生に読ませるような漫画ではないと思ったが,娘はそこそこアニメを観,コミックも数冊家にある。ただ,さすがに実写については当初娘は観たくないといっていたが,徐々に心変わりして,結局観ることとなった。公開に合わせて発売されたコミック最終巻と合わせて,実写版のドラマが進行し,映画はその結末を描くというところが気になったようだ。
公開2日目に観ることとなり,映画館に向かう前に最終巻コミックを購入し,電車の中で娘が読む。読み終わったので私も映画館で少し読む。2日目にしては客の入りはよくない。冒頭は一応コミックやアニメ,ドラマなどを観たことがない人向けに一通りの説明がある。途中の展開の説明はほとんどなく,最終話についてもかなり省略や脚色があるが,あまり物語展開を理解していない私のような観客にも十分に楽しめる内容だった。私が知っている俳優が少なかったのも楽しめた一つの要因だったかもしれない。
https://oshinoko-lapj.com/

 

2024年1229日(日)

立川シネマシティ 『侍タイムスリッパ―』
息子と二人で出かけることになり,観たい映画を探してもらって選ばれたのがこちら。以前にも似たような設定の映画があったが,こちらはパートナーも薦めていたし(彼女は文化系に詳しいインスタグラム仲間がいて,その手の情報に詳しい),予告編を観ても面白かったので観ることにした。
幕末の武士が決闘中に雷に打たれ,現代にタイムスリップするという話。たまたま来たところが京都の時代劇撮影所ということで俳優として身を立てていくという展開。作り手の時代劇愛が溢れた素晴らしい作品。パートナー情報によるとこの作品は池袋シネマロサでの単館上映が話題になって全国に広まったという。シネマロサという旧来の映画館でまだやっているところはほとんどなくなってしまったし,こういうヒットは嬉しい限り。ちなみに,本作で重要な役どころである,時代劇の助監督を演じている沙倉ゆうのさんはエンドロールで何度も名前が出てきたが,出演俳優というだけでなくスタッフとしても働いていてまさに役どころそのもの。30年前には時代劇があたり前のようにテレビで放映されていたが(実際にはもう少し前だと思うが),最近で週に一回観られればいいもの,という状況に対して本格時代劇映画を作るというのが後半の見どころ。それは作中だけのことではなく,本作そのものがそうした心意気による作品だと思う。ちょうどそんなところに,松平健の『暴れん坊将軍』のテレビシリーズが復活するというニュースがあった。なんと脚本が大森美香さんで監督が三池崇史さんだという。時代劇映画は最近少なくないと思うが,テレビドラマも盛り上がってくるかもしれない。
https://www.samutai.net/

 

2025年12日(木)

吉祥寺アップリンク 『ありきたりな言葉じゃなくて』
この日は個人行動が許されたので,久し振りに吉祥寺に出かけた。チリの女性運動に関するドキュメンタリー映画『私の想う国』が観たかったが,他の上映作品を探したら,この作品が気になってしまったので,日本映画を観ることにした。
主演の前原滉さんという俳優さんは初めて観るが,台湾映画の俳優のような雰囲気があって好感が持てたが,前半の演技には少し違和感があった。しかし,後半のクライマックスではとても良かった。なお,本作はテレビ朝日の番組制作チームによるものだという。実話をベースにしているということもあり,私もジャンルは違えど物書きであるので,主人公と同じような経験があった。なお,主人公はジェンダー関係の意識が低いというところにリアリティがある。かといって,明らかなセクハラをするということではなく,女性の立場に立てないというところを克服しようとする努力を放棄しているともいえるもので,ジェンダーやフェミニズムをそれなりに学んできた私も同じようなことをしてきたと反省させられた。この作品としては,その辺りに非常に意識して丁寧に描いている。演技に違和感のあった主人公に対し,相手役の女性を演じる小西桜子さんの役どころと演技はなかなか良かった。とにかく,なかなかいい映画だった。
https://www.arikitarinakotobajyanakute.com/

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【映画日記】『ルート29』『ぼくが生きてる,ふたつの世界』

2024年1124日(日)

調布シアタス 『ルート29
綾瀬はるかと『こちらあみ子』の大沢一菜によるロードムービー。監督も『こちらあみ子』の森井勇佑。今,ウェブサイトを見ていたら,撮影が飯岡幸子さんだと知る。飯岡さんは杉田協士監督作品を撮影している人で,以前杉田監督とのトークショーを聞いたことがある。そういえば,杉田さんも本作にちょっと出演しているとツイートしていたな。でも,スクリーンでは見つけられなかった。原作は中野太一。
本作の監督が『こちらあみ子』の人だとは知らずに観たが,観た後に知って納得。原作があるとはいえ(まあ,『こちらあみ子』も原作があるわけだが),独特な雰囲気の,そして奇異な展開の,ある意味では無駄に長い,姫路から鳥取まで二人が珍奇な旅をするというロードムービーだった。こういう映画を綾瀬はるかという俳優の主演で撮れるというのが面白くも感じる。この映画を観てこの俳優は演技がうまいのかそうでないのか,よくわからなくなるが,その存在感だけでいいのかもしれない。主演でありながら実は周囲の人間の方がよっぽど個性的で,主役として観る者が感情移入できるような対象でもない。本作の見どころは,綾瀬さん演じる女性の姉との再会シーンだと私は思う。姉を演じるのは河井青葉さんという俳優だが,濱口竜介監督作『偶然と想像』でも独特の演技を披露していた。突然のように,姉が勤める小学校に二人が訪れるシーンがある。その前のシーンで雨に濡れるところがあるので,大沢演じる少女が熱を出してしまい,姉の家に泊まることになる。そこで,姉妹での会話の比較的長いシーンがあるのだが,ともかく姉が一方的に語るのだ。妹はほとんど話をしない。その不均衡さが何ともいえない。
https://route29-movie.com/

 

2024年1130日(土)

パルテノン多摩小ホール 『ぼくが生きてる,ふたつの世界』
近年,日本各地で映画やドラマの撮影を支援するフィルム・コミッションが多くあるようだが,日野市にも日野映像支援隊なる団体があり,そこが関わって日野市内で撮影されたドラマや映画の情報が広報に掲載される。本作もそれで存在を知った。しかも,監督が呉 美保さんだとなれば観るしかない。と思っていたのだが,けっきょく劇場公開で観るのを逃してしまった。幸い,TAMAシネマフォーラムでトークショー付き上映会があることを知り,早速予約した。
久し振りに参加するTAMAシネマフォーラム。会場はとても賑わっていて,あちこちでお客さん同士の出会いがある。映画祭マニアたちなのか,吉沢亮ファン仲間か(吉沢さんの登壇はありませんが),TAMAシネマフォーラム常連さんか,分からないがただの映画上映ではない雰囲気です。ウェブで予約するだけではだめで,当日会場で入場整理券との引き換えが必要ということで出遅れた私は座席の確保を心配したが,前から2列目をゲットした。最前列中央のスタッフ席の理由はすぐに分かった。
吉沢 亮が五十嵐 大という実在のコーダ(耳の聞こえない両親から生まれた耳の聞こえる子ども)を演じる作品。なんと呉 美保監督は9年ぶりの劇場映画ということだ。本作の進行中に『コーダあいのうた』が航海され,アカデミー賞の受賞もあり,本作にも様々な形で影響したという。ろうあ者の役を当事者が演じる。また,さまざまな形で制作側にろうあ者の協力があるのだが,共同演出のようなかたちになったとか。舞台には呉監督と吉沢氏の母親を演じた忍足亜希子さんが上がった(聞き手は若い男性映画ライター)。トークショーといっても忍足さんは耳が聞こえないので,客席最前列に座る2人の手話通訳者が,トーク相手の話を手話で忍足さんに伝え,忍足さんの手話を話し言葉に翻訳するという形でトークショーは進められた。
上映前のトークショーだったので,私は予告編とチラシでした忍足さんの姿を見ていなかったが,ウェブサイトで分かったところでは何と忍足さんは私と同い年。ステージ上の彼女はカラフルな衣装に身を包んだまさに美しい女優さんで,本作でも主人公である大が生まれた時の20歳台からを演じている。なお,大役は赤ちゃんから小学低学年,小学高学年と子役が数人代役しているが,どの子も目がぱっちりしていて,吉沢亮氏の子ども時代を見事に再現している。そして吉沢氏自身はなんと中学生から演じているのだ。さすがにそれは少し無理があるが,制服のズボンの丈を極端に短くして,入学した時に合わせたズボンがあっという間に短くなった,というようなシチュエーションで中学生を演出しているのはすごい。そして,実在する大氏の成長した時代に合わせて,ファミコンやポケベルなどが登場するなど,時代の再現にも余念がない。結局,日野市で撮影されたのがどこだか分からなかったが,日野市は煉瓦造りの古い市役所を修復して使っているので,それかもしれない。最近の多くの役所は建て替えられて真新しくなってしまっているので,数十年前を想定した撮影には不向きだ。
ということで,ドキュメンタリーフィルムばりのリアリティで大の反省を描く作品。ろうあ者の存在もリアルに描きながらでも,そこを過度に強調するわけではない。そういう意味では呉監督らしい作品。しかし,同じ2時間程度の映画ながら,『コーダあいのうた』と比べ,本作はろうあ者の世界と健常者の世界という,作品名に込めた「ふたつの世界」について観る者に考えさせる仕組みが弱かったように感じた。それはある意味での日本社会でのリアリティを重視したものだといえるのかもしれない。それはつまり,ふたつの世界を知っている主人公でさえ,ろうあ者の世界を積極的に知ろうとする努力を言葉を用いてはあまりしない(主人公はろうあ者の人たちと関わろうとしている)。そこは日本社会のリアルから一歩進んでこうあってほしいという提言を込めても良かったのではないかと感じた。
https://gaga.ne.jp/FutatsunoSekai/

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【映画日記】『戦雲』『アイミタガイ』

2024年114日(月,祝)

日野市TreeHALL 『戦雲』
本作の監督である三上智恵さんは,日野市に講演をしに来たことがあり,聴きに行った。それ以前から私が見ているYouTube番組に沖縄の自衛隊配備の問題について話をしているのを聴いていたのでしていたが,しっかりと時間を取った講演と,また本作の映像素材からなる「スピンオフ」上映も観ていたので,その劇場版である本作は映画館で観るつもりでいたが,観ることができなかった。そういう意味でも,地元のイベントとして上映会があったのは本当に嬉しく,なんとか予定をあわせて,息子を連れて観に行った。
やはりというか当たり前だが,スピンオフの素材以外のものが沢山盛り込まれ,また削られたものもあった。かなり盛り込み感があった長い映画だったが,どの素材も重要で沖縄の離島の現状を伝えたいという意思を強く感じた。本作では沖縄の離島である,宮古島,石垣島,与那国島を中心にここ10年くらいで次々と自衛隊基地が建設された場所と,それに抗おうとする島の住民たちの姿を描いている。もちろん,基地はすぐにできるわけではない。東京に届く普通のメディア報道では,できてから伝えられるが,地元の特にそういうことに敏感な住民にはそういう情報が少しでもあれば伝わり,もちろんそれらを県外に伝え続けているジャーナリストでもある三上さんの耳には入るのだろう。本作で圧巻なのは,ドローンの発達も手伝って,自衛隊基地建設前後の敷地のビフォー&アフターが俯瞰的な映像で観られることだ。私は観ていないが,映画『Dr.コトー診療所』の撮影には与那国島が用いられ,豊かな自然が豊富な島々である。そうした森を切り開き,まっさらな基地が建設される。都市部のかつての賑わいが失われて放置されたままになっている地区がきれいに再開発されるさまというのは,その施設の利用が見込めないような無駄な開発でも,こんな私でも爽快感を感じたりするが,美しい自然(もちろん,その価値観は部外者である私の勝手な印象であり,実際に住む人にとっては別の感情もあるとは思うが)を破壊した上にできるきれいな整然とした施設だとしても,軍事施設というのははっきりいって何の役にも立たない。役に立つ時が来たら何もかも破壊されるのを待つだけ。そんなものを望むはずはない。しかし,一方ではこれを望む人がいるからこそ,次々と建設されるのだ。その理不尽さのみを感じさせられる作品。しかし,そこは丁寧な取材と撮影を続けている三上さんは違う。興味深いのは,住民が防衛省の説明会で,「自衛隊は住民を守ってくれない。先の戦争でも軍隊は沖縄県民を守らなかった」という沖縄の人が良くいう主張を聴いていた,傍聴者側に座っていた現地の自衛隊員が,意見した人の方に体を向けて,「私たちは皆さんを守ります」と何度も語っていたこと,また地元のお祭り(ボート競走)に自衛隊員も参加して,練習を重ねて受け入れられていくところ,また自衛隊員の子どもが,自分は数年で次の基地に移っていくことを知りながら,この島のことが好きだと語るところ,個人レベルでの人間関係はお互いの接し方で何とでもできるが,それを上の組織が壊していくのだ。それに抗わなければならない。
https://ikusafumu.jp/

 

2024年116日(水)

府中TOHOシネマズ 『アイミタガイ』
水曜日はいつも朝一から10:30までの授業をやって,15時からは私が所属する日本共産党の支部のLC会議に出席している。その間の時間,ここ数週間は選挙活動をしていたが,久し振りにフリーになったので,映画を観ることにした。ただ,何となく遠くには行きたくなかったので,近場のTOHOシネマズで黒木 華さん主演のこちらを観ることにした。けっこうキャストが豪華。安藤玉恵さんに西田尚美さん,田口トモロヲさんに風吹ジュンさん,草笛光子さんまで出ている。とはいえ,ストーリーはかなりベタな感じで,タイトルの「アイミタガイ」とはその地方の方言で,お互い様のような意味合い。誰かの何気ない行為が巡り巡って身近な人の小さな幸せにつながっていてというようなお話。現実世界でそういうことを実感した瞬間は大きな驚きをもってその喜びを味わうわけだが,これはフィクションだからね。そんなことをテーマにしなくても多くのドラマは限られた登場人物資源を有効に使いまわしているってのが私の持論。まあ,とはいってもフィクションと分かっていてこういう物語に没頭して暗い映画館で泣いてしまう,そういうのが私のひそかな楽しみでストレス発散(別にたまってはいませんが)であったりする。
https://aimitagai.jp/

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【映画日記】『シビル・ウォー』『HAPPYEND』

2024年1014日(月,祝)

立川シネマシティ 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』
米国は4年に1度の大統領選挙を控えていますが,トランプ氏が大統領に立候補していた8年前から米国での分断が加速し,さらにトランプ氏による再度の立候補で分断の危険性がかなり懸念されている。そうしたなかで,米国にも近い将来国内紛争が起きるのではないか,そういう不安を映像化した作品。そこまでは知っていたが,ちゃんと予告編を観ないまま急遽劇場に足を運んだ次第。なんと,主演がキルスティン・ダンストでした。ネタバレ注意です。
civil war
とは米国の文脈では通常南北戦争を意味する。この映画ではその再来として,東西の分裂から生じた紛争を想定している。とはいえ,戦争自体は後景に遠のいていて,前景にはキルスティン演じる女性戦争カメラマンたち4人のジャーナリストたちがいる。そう,ジャーナリストの目から見た米国の戦争なのだ。少し前に見た『ソウルの春』は過去に実際に韓国で起こった軍事クーデターで,戦闘自体は首都ソウルをめぐる比較的狭い範囲だが,近未来を描き,ほぼ全米を巻き込んでいる本作とかなり重なり合う。本作はあくまでも想像上の紛争なので,あまり具体的に東西陣営の州の分割などは描かれていないが,ウェブサイトにはテキサスとカリフォルニアを中心とする西部勢力が反乱(反現政府)側で,19の州が連邦から離脱したと書かれている。
ロシアによるウクライナ侵攻,イスラエルによるガザ攻撃がリアルタイムで世界中に伝えられる今日,皮肉なことにフィクションとしての戦争映画のリアルな描写の精度が上がってしまったという印象。しかし,一方で確かにミサイル攻撃やドローン攻撃といった最新技術を用いた戦闘の様子も再現されていたが,戦術としては本当にそうなるのかな,という素朴な疑問もわいた。そういう意味でも戦術が分かるような描き方はしていないのだが,結局は陸続きで首都(ワシントンD.C.)陥落に向けて攻め入っていくというのはなんか古臭い想定のような気がしないでもない。そして,最終的に現職の大統領を有無も言わせず殺害してしまうというのもなんか古臭い。それだけ,この作品は近い将来を描いているのであって,少し遠い未来を描いているわけではないのかもしれない。
https://happinet-phantom.com/a24/civilwar/

 

2024年1020日(日)

立川キノシネマ 『HAPPYEND
空 音央という監督の長編デビュー作。先日,Dialogue for Peopleが配信するRadio Dialogueという番組にゲストで出演したので,この作品の存在は知っていたが俄然見たくなった。しかし,多摩地域では夕方からの回しかなく,母娘が一日出かける日を狙って息子を連れて観に行くことにした。ネタバレ注意です。
舞台は緊急事態条項が書き込まれる憲法改正が成立した近未来の日本。高校生が主人公で,佐野史郎が校長を演じる高校が舞台。在日外国人の生徒の割合が高く,1/3ほどが日本国籍を有しない。なぜ,このことが分かるかというと,高校の特別授業で自衛官が講師を務めるというシーンがある。要は自衛隊員の勧誘を兼ねているわけだが,外国籍の生徒は対象にならないので,別教室で自習をしろということだ。白人はほとんどおらず,黒人と中国,韓国が目立つ。外観からいわゆる東南アジアや中東的な生徒は少なかったような印象。いつもつるんで音楽系のサークル(いわゆる軽音的な自分で演奏するのではなく,DJ機器を使ってパーティ的な盛り上がりを楽しむ感じ)の5人が主たる登場人物。一人が在日朝鮮人の男子生徒,一人がアメリカ国籍を持つ黒人ルーツ,一人が台湾にルーツを持つ女性,残り2人は日本人男子。主人公2人のうち一人が在日朝鮮人でもう一人が裕福だがシングルマザーで不在がちな家庭の日本人。この2人がDJ目指して音楽制作側,残り3人は楽しむ側。緊急事態条項が成立した背景は戦争というより地震。頻繁に地震のシーンがあり,また誤報も含めて地震計画アラートが鳴り響く。しかし,現実における緊急事態条項と同じように有事の際のことも含まれているようで,舞台である高校に自衛官が特別授業をしに来るシーンがあるのは上述した通り。そして,街中では緊急事態条項に反対する市民のデモがあり,それを警官が弾圧するシーンもある。高校という狭い世界でも,生徒たちを監視するシステムが導入され,監視カメラによる固体認証,発言や行動をAIが校則にのっとったものかを自動判別し,点数化する。街中では自警団によるパトロールが行われ,警察官はレイシャル・プロファイリング(外国人的な見た目をした人を狙って職務質問をする)など,近年話題となっている日常生活に忍び寄る政治的問題がてんこ盛りになっている。かといって,それらをごく自然に高校生の日常生活に含ませる演出は素晴らしい。とはいえ,個人的にはデモのありかたは少し不自然にも感じた(デモに自分が参加したことはほとんどないし,街中で見かけたことも多くはないが)。そして,面白いのが,高校生たちの保護者として登場するのが女性だけということだ。今日であればそれは残念ながらまだ自然だが,外国籍の生徒の割合がこれだけ高い社会が想定されている未来においてもまだ市民の日常におけるジェンダー平等が進んでいないように見えるこの演出は,監督が意図したものなのか。ともかく,考えさせられることが多い作品。
https://www.bitters.co.jp/HAPPYEND/

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【映画日記】『ソウルの春』『本日公休』『わんだふるぷりきゅあ!』

2024年97日(土)

立川キノシネマ 『ソウルの春』
私は元々歴史には疎い人間だった。地理学者として30年,人文・社会科学者を自認するなかで歴史認識の必要性を感じつついろいろ読んではきたものの,基礎的な知識が足りないのと,特定の国の歴史に特化した読書をしてこなかったこともあり,お近くの台湾のことも中国のことも,朝鮮半島のことも断片的にしか知らない。しかも,現代史においてもしかりであり,この作品で描かれることはほとんどわかってなかったといってよい。もちろん,日本による植民地からの解放後,南北に分割されて独立国家となり,米ソ冷戦の代理戦争として朝鮮戦争が行われ,休戦後も韓国では軍事政権が敷かれ,民主化されたのは1988年のソウル・オリンピックが開催される前後であったという漠然とした知識しか持っていない。
この作品で描かれているのは1970年代の話。けっして私の生まれる前の時代ではない。ソウル・オリンピックまではまだだいぶあるが,タイトルからして「〇〇の春」といえば民主化運動のことなので,何も知らない私は冒頭で描かれる軍事政権が少しずつ崩れていく姿が描かれるのかと思いきや,軍隊内(政府内?)のもっとひどい奴らによる軍事クーデターが成功してしまうという話だった。史実を基にしているとはいえかなりエキサイティングな演出がなされ,途中まではクーデターを阻止しようとする正義感に満ちた人物が勝利するのかと思いきや,結局は悪者に政権が乗っ取られてしまうという時代の話。このことの史実も含め,その後の民主化への流れについては自分でしっかり勉強しなくては,と思った次第。
https://klockworx-asia.com/seoul/

 

2024年921日(土)

立川キノシネマ 『本日公休』
台湾映画。とある街の理容室を切り盛りする中年女性が主人公。夫には先立たれ,楽して金儲けばかりを考えている息子。美容師になったもののいろいろとうまくいかない娘。彼女は自動車整備士の男性と結婚して子どもも産んだが,些細な価値観な相違によって離婚。彼は子ども散髪にかこつけて義母のことを気にかけている。そして,ファッションデザイナーとして台北に住む娘。こちらはいかにも都会的な男性と同棲しているが,浮気をされている雰囲気。そんな親子関係を中心に,常連さんたち(登場するのは全て男性客)から慕われる小さな美容室を描いている。途中で日本の作品にもいくつか出演しているチェン・ボー・リンがちょい役で出てきたりして嬉しい。ちょっと冗長なシーンもあるが,台湾的な雰囲気のある素敵な映画。
https://www.zaziefilms.com/dayoff/

 

2024年922日(日)

府中TOHOシネマズ 『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!ドキドキ♡ゲームの世界で大冒険』
このブログでたびたび書いているように,娘は劇場版のプリキュアはそこそこ楽しみにしている。今回もしっかり前売り券を購入して特典をゲットして臨んだ。今回のシリーズ「わんだふるぷりきゅあ!」は飼い犬と飼い猫がプリキュアに変身して人間化するというもの。犬と猫に戻っている時も言葉を使ってコミュニケーションをとっている。そして今回の映画はゲームの世界に入り込んでしまうという設定で,「あつまれどうぶつの森」的なゲームなので,絵柄もこれまでのプリキュアシリーズよりも可愛らしい。そのせいもあってか,観客層は幼い子どもたちが増えたような気がするし,上映2週目の終末だったが,席もそこそこ埋まっていたように思う。新しいファンを獲得しているのか。ともかく,映画版のストーリーもよく考えられていて,十分に楽しめる内容だった。
https://2024.precure-movie.com/

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【映画日記】『掟』『ラストマイル』『愛に乱暴』

2024年91日(日)

この日は日本共産党の前国会議員である大門実紀史さんが日野で講演をするということで楽しみにしていた。家族は皆で立川で映画を観るということだった。すると,支部の方から連絡があり,大門さんの講演は本人の急病により中止になったとのこと。急いで立川で観られる映画を調べて出かけることにした。

立川キノシネマ 『掟』
時間的に都合がいいということで選んだ作品。東京都知事選挙で得票数2位になった石丸伸二氏をモデルにした劇映画。実は,5月にも彼を取り上げたドキュメンタリー映画『つぶやき市長と議会のオキテ』があって,映画自体は観られなかったが,ポリタスTVMCの宮崎園子さんが監督をゲストに議論する回を観ていた。その時は安芸高田市長としての石丸氏のことは何となくしか認知できていなかったが,都知事選で否応なしに彼のことを否定的な意味で知ることとなった。
『掟』の方は,事実に基づきながらも俳優を使った,人物名も地名も架空のものを使ったフィクションであるが,予告編を含めた宣伝の仕方は石丸批判的な雰囲気があったので楽しみに観に行ったが,実際はそうではなかった。おそらく上記のドキュメンタリー映画も一方的に石丸氏を断罪するようなものではなく,やはり石丸氏が改革したかった地方議会のあり方も大きな問題があることが分かる。とはいえ,石丸氏のネット戦術について『掟』の方ではほとんど描かず,公共事業の民間委託を中心とした新自由主義的な政策というのは描いているが,かなり石丸擁護的な作品だと私の目には映った。
https://malibu-corp.com/okite

 

2024年94日(水)

この日は私が勤めている会社の創立記念日ということでお休み。ちょうど午前中は息子の通う中学校の学校公開ということで観に行った。とても良い授業の進め方でとても参考になった。午後からは近場で映画。

府中TOHOシネマズ 『ラストマイル』
私のパートナーが薦めていた映画だったが,満島ひかりと岡田将生の出演ということで観ることにした。どうやらいくつかのテレビドラマを手掛けていたスタッフが,キャストと役どころもドラマのまま利用するというなかなか豪華な企画らしい。監督も脚本家も女性でこれだけ豪華な映画が作れるってのはすごいな,というのが第一印象。それはけっして女性の能力のことをいっているのではない。両者ともテレビドラマで評価を得て,劇場映画に進出ということかもしれないが,ともかく多額のかかる(CM収入でまかなえるテレビドラマとは違って,興行収入で回収しなければならない)映画が女性のクリエイターに任せられるということに新奇さを感じたということ。また,エンタメ映画でありながら,社会問題を扱っているというのも面白い。明らかにアマゾンを意識した,外資系の日本の物流大手を舞台にして,その流通センターを中心として,その荷物を運ぶ運送会社,そこで実際に荷物を運ぶドライバー。その企業間関係も含め,物流センターでの自動化される荷捌きと派遣・アルバイトの労働者たちとその管理体制,そうしたいかにも資本主義の最先端の問題をあぶりだしている。もちろん,グローバル企業の問題も。満島さんの演技はいつもながら魅力的だが,今回は岡田君の演技に注目していた。最近観た彼の演技はなんとなくしっくりきていなかった。彼がテレビドラマにどれだけ出ているかは知らないが,デビュー当時(『天然コケッコー』?)から映画に継続的に出演している。それは演技を評価されてなのか,単なる美貌か。本作を観てひとつ分かったのは,美貌を売りにするような役どころやコメディは向いていないということだ。やはり本作のような役どころは彼を魅力的に見せる。ただ,今後はいろんな役で彼の魅力を引き出すような作品を期待したい。
https://last-mile-movie.jp/

 

2024年95日(木)

吉祥寺アップリンク 『愛に乱暴』
なんと,一週間に三本の映画を観るという久し振りのスケジュール。この日は4日間与えられている会社の夏休み(有給)の最後の1日をとった。選んだ作品は江口のりこの主演作。吉田修一原作ということだが,これまで映画化されたものとはちょっと雰囲気が違って一組の夫婦+姑というこじんまりとしたスケール。江口の夫役を演じるのが小泉孝太郎。彼の演技をちゃんと見たことはなく,いつも満面の笑みを浮かべたCMくらいしか見ていなかったので,前髪が長くほとんど顔の全体像は分からず,CMでは比較的高い声を出しているが,本作ではぼそぼそと低い声で,まったくイメージが違かった。風吹ジュン演じる姑との仲が深い母息子関係という設定だが,なかなか面白い。風吹ジュンも相変わらず見た目が若いが,さすがにこの辺りの配役をさせられるようになったか。江口さんは以前は躊躇なく裸体を披露する稀な俳優だったが,本作でもさりげなく胸が写っている。ストーリー的にはなかなか評価が難しいが,江口のりこさんを堪能できるのと,雰囲気的には好ましい作品だった。
https://ainiranbou.com/

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【映画日記】『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』『風が吹くとき』『雪道』

2024年810日(土)

府中TOHOシネマズ 『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』
久し振りに子ども2人と3人で観に行った。中2になる息子はなんと主題歌を歌うmy hair is badが好きということで観に行くと言い出した。娘もしんちゃんものは欠かさず観ているというわけではないが,今回はそろって観に行くことになった。まあ,なんちゃってジュラシック・パーク的な発想によるストーリーで,新規な感じはしなかったが,今回は野原家の飼い犬,しろが大活躍するということで,それなりに楽しめた。
https://www.shinchan-movie.com/2024/

 

2024年811日(日)

吉祥寺アップリンク 『風が吹くとき』
『スノーマン』の作家,レイモンド・ブリッグズが1982年に描いた漫画で,1986年に映画化されたもの。日本でも吹替監督を大島 渚,主役の夫婦を森繁久彌と加藤治子が担当して1987年に公開されたとのこと。舞台はのどかなイングランドらしい農村風景が広がる一軒家。子どもも独立して夫婦だけで暮らす。隣近所が接しているような感じではなく,登場人物は夫婦二人しか出てこない。夫が町に出て,政府が発行する戦時下のパンフレットをもらってきた。パンフレットによると戦争が近づいているから注意しろとのこと。今後来る戦争は核兵器が想定されるから自宅にシェルターを作ることを推奨している。ラジオでは毎日のように戦争の危険を訴えていて,夫はシェルターを作り始める。といっても家じゅうの扉を外して,壁に立てかけて固定してちょっとした小部屋を作るだけ。しかし,結局原爆は落とされ,夫婦はかろうじてその即席シェルターに逃げ込むことができた。命は助かったものの,シェルターでは生活の何もできず,二週間はそこでとどまっておくようにとパンフレットには書いてあったのに,2日間で出てきてしまい,家の中で過ごす。しかし,電気はもちろんのことガスも水道もなく,保存食はあったものの水はなく,雨水を摂取してしまう。妻は何度も「放射能っていうけど何も見えないわよ」といって,結局被曝してしまう。二人とも被曝の症状が出てくるが,夫は「そのうち政府がなんとかしてくれる」「そのうち助けがくるよ」などといい続けるが,状況は改善せずに物語は終わってしまう。見た目の可愛らしい絵柄とは無関係に,冷戦期に起こり得た原爆戦争の悲惨さを伝えている。
それは,広島や長崎のような都市部の被害として描くのではなく,戦争とは無関係な一組の夫婦という極端な設定で描いているので,こんな場所に原爆は落とさないよ,などと思ったりもするが,現在の核兵器は広島・長崎に落とされたものより威力が桁違い,なんていいかたもするので遠く離れた都市に落とされたものがこの一軒家にも被害が及ぶという捉え方もできるかもしれない。いずれにせよ,無防備なところに衝撃を受けてしまった作品。息子はどう受け止めたのだろうか。
https://child-film.com/kazega_fukutoki/

 

2024年812日(月,祝)

日野市七生公会堂 『雪道』
日本軍の従軍慰安婦を描いたこの韓国映画。2015年の制作とのことだが,公式に日本で公開されていないので,ウェブサイトもない。以前から『しんぶん赤旗』で日本各地の上映会の広告が出ていたので私は知っていたが,なかなか近場で観る機会はなかった。そんなことで,地元の日本共産党の市議会議員が中心となって上映会を実現してくれた。上映後のゲストとして,これまた地元の明星大学に勤める土野瑞穂さんを読んで,講演もしていただいた。
少女二人が主人公ということで,慰安婦をテーマとした作品ながら性描写は少ないというのが今回の上映会主宰者からの予備知識。私はポスターのビジュアルから勝手に慰安婦を扱いながらもそれは一部であり,少女たちの日常を描くようなものだと想像していた。しかし,まさにそうした私の認識の甘さをえぐるような作品だった。二人の少女のうち,一人は生き残り,現代の様子も描かれる。高齢になった彼女の長い人生のなかで慰安婦とされた時期は数年と短いかもしれないが,その後の人生のなかでその出来事がどれだけ大きいことか,そんなことを思い知らされる。彼女と同じ慰安所で過ごした少女たちは,その慰安所の閉鎖に伴って解散かと思われるシーンがあるが,少女たちが二つのグループに分けられるのだ。一部の女たち(服装が違い,和装なので日本人か?)の行方は分からないが,大多数はその場で撃ち殺されてしまう。主人公の少女二人は女性たちが選り分けられることに違和感を抱き,逃げることに成功するが一人はその時に銃弾を肩に受け,途中で亡くなってしまう。彼女たちが連れて行かれた慰安所は満州だったと思うが,そこから朝鮮半島まで徒歩ではかなりかかる(映画では言及があったが,一週間か一か月か)ということで負傷してしまっては生き延びれない。ただ,映画としては現代の韓国で行き場を失った女性との出会いがあり,その子を保護し,自分の過去を語ることで,自身も語り部になっていくという展開で,希望を感じさせるラストだった。
土野瑞穂さんの講演は,日本軍従軍慰安婦に関する基本的な説明を,現代のアフリカを事例とした戦時下の性暴力の問題と結び付け,それが決して終わった話ではなく,ウクライナでもガザでも,また沖縄でも形は違えど続いている問題であることを考えさせる,とても素晴らしいものだった。
https://www.kinejun.com/cinema/view/97157

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【映画日記】『医学生ガザへ行く』『大室家dear friends』『映画 おいハンサム!!』『骨を掘る男』

2024年622日(土)

日野市東部会館 『医学生ガザへ行く』
パレスチナに連帯する人たちの有志が多摩地域でパレスチナについて考える集会を,ということで企画された映画上映会に行ってきた。パレスチナ関連の物販(残念ながら書籍の販売はなく展示のみとなったが)も含めて手作りながらなかなか行き届いた上映会だった。観客席には日野市を含む選挙区の野党共闘候補となった,立憲民主党の大河原まさこさんの姿もあった。
さて映画だが,原題は「ガザのエラスムス」という,2018-2019年に撮影されたドキュメンタリー。エラスムスというのはルネッサンスに生きた人物だが,映画『スパニッシュ・アパートメント』でも描かれたヨーロッパ全域の奨学生(?)制度。この制度について詳しくは知らないが,EU内でかなり自由に大学を選べたりするようだが,この映画の主人公のように,いろんな場所に実地研修などに行くプログラムがあるようだ。この主人公はガザでの救急医療を経験したいということで,2018年の数か月,ガザに滞在して現地の大学医学部で学ぶ。この映画を観れば,イスラエルによるガザへの攻撃が202310月以降に始まったものではなく,また攻撃以外にもさまざまな理不尽(検問のことや停電のことなど)があるということ,またそれでも街は継続的に行われる空爆の跡がそこかしこにありながらも,人々はそれなりに日常生活を送っているという生活の風景が大部分を占めていることが分かる。
この日の上映会では,日本の配給会社による主人公の最近のインタビュー(この映画は昨年10月の本格的なガザ攻撃以前に撮影された)が上映後に流された。現在はヨーロッパで生活する主人公だが,今日のガザの状況について冷静に判断し,的確に受け答えをしている姿が印象的だった。映画の際にガザを訪れたばかりの主人公はあまりイスラエルにおけるパレスチナの状況についてそれほど多くを知っていたわけではなかったようだが,やはり実際にガザに住む同年代のパレスチナ人たちの生活は彼の意識を大きく変えたことがうかがえるインタビューだった。
https://unitedpeople.jp/archives/4501

 

2024年629日(土)

立川シネマシティ 『大室家dear friends
以前観た『大室家dear sisters』に引き続き,娘と一緒に続編を観た。上映時間が短いわりに特別料金ということで大人も子どもも統一料金というのは不満だが,作品はとても良い。親が出てこない,小中高3姉妹の日常を淡々と,そして一つ一つのエピソードのオチがあるわけでもなく,次から次へと展開するこのゆるーい感じが何ともいえません。ひとまず,今回の劇場版はこの2作で終わりのようだが,淡々と続く日常が何とも気になって仕方がない。
https://ohmuroke.com/

 

府中TOHOシネマズ 『映画 おいハンサム!!
何となく,空き時間で自宅から近い映画館で観ることになった作品。こちらもテレビドラマの劇場版ということだが,なかなか面白かった。そういえば,こちらも3姉妹の話。どうやらタイトルの「ハンサム」とは姉妹の父親のことらしいのだが,見た目がハンサムという意味ではなく,家長としてまっとうな思想をもち,行動する,そのことがある意味で家父長的な家族の絆を強くしているのだが,実のところは妻を中心とする女性たちの信頼と支えが家族の絆の源泉であるというお話だと理解した。まあ,こうしたフィクションで語られると嘘くさい感じはしてしまうが,妻=母親のセリフ「家事というものは毎日繰り返すもので終わりがないもの」とか,夫=父親は街づくりを専門とする人間だが,金儲け第一の開発よりも人情と個々の顧客に愛される味わいのあるお店を大切にするような意識は今更ながら,こんなベタな映画からでも思い出して学ぶべきなのかもしれない。
https://www.oihandsome.com/movie/

 

2024年77日(日)

東中野ポレポレ 『骨を掘る男』
息子と一緒にまたポレポレ東中野。この日は東京都知事選挙で,朝一緒に出掛け,投票し,所属する日本共産党の地域支部の事務所に立ち寄り,「棄権防止活動」というものを15分ほど行った。後援者の名簿を使って電話をかけ,「投票はお済でしょうか」と念を押す。
さて,この日観たのは,沖縄で戦没者の遺骨発掘を28年間続けているという具志堅隆松さんの活動を追ったドキュメンタリー。具志堅さんのことはDialogue for peopleの配信等で知っていたが,こうして2時間近い映画で数年の活動を追ったフィルムを観ると,本当に尊敬の念しか浮かんでこない。この映画は監督自身が沖縄戦の戦没者を親戚に持つということで,どこでどうやって亡くなったかも分からない人物の行方を探すこともこの映画では含んでいる。同じように,親戚がなくなった場所だけは分かった人も登場し,その場所を具志堅さんと3人で遺骨発掘に行くシーンもある。また,実は具志堅さん自身にも当時の占領地であった太平洋の島嶼部で親戚を亡くしているが,そこには足を運んでいないという。遺骨を探すという行為は実際に遺骨を探し出す目的は常にあるのだが,具志堅さんにとっては無数の死者たちと向かい合う時間だというのだ。
なお,監督は親族たちのDNAサンプルを用いて労働厚生省が行っている戦没者のDNA鑑定を行った。結果は該当せずということになったが,この制度については映画のなかであまり詳しくは説明されていなかった。沖縄戦没者に限定したものなのか,具志堅さんが掘り起こした遺骨はその鑑定のために労働厚生省に提供されているのか。もしそうだとすると,遺骨の発掘を一個人である民間人に任せているというのはどういうことなのか,ある程度の資金援助はなされているのか,いろんなことが思い浮かぶ。
https://closetothebone.jp

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【映画日記】『トラペジウム』『青春18×2 君へと続く道』『からかい上手の高木さん』

2024年525日(土)

府中TOHOシネマズ 『トラペジウム』
乃木坂46の高山一実さんという人の原作によるアニメ作品。私の娘がアイドルもののアニメが好きなので観に行った。観客席には子どもの姿はほとんどない。主人公は田舎に住む高校生で,それは後で分かることだが一人でオーディションを受けるタイプのアイドル活動はことごとく失敗したため,この田舎町からそれとなく仲間をつどい自分でアイドルグループをプロデュースする形で道を開くという物語。この原作者がどういうアイドルで,自分のことをどれだけ作品に反映しているか分からないが,よくできているストーリー。アイドルの内実についても素人の目から見るとそこそこ丁寧に描かれていて,一定のリアリティを確保している。そんなこともあって,娘はかなり気に入った様子。乃木坂効果でそれなりの集客はあると思うが,もう少しターゲットを子どもにも合わせても良かったとは思う。登場人物のなかでアイドルを諦める子がいるからだろうか。
ちなみに,トラペジウムとは台形をした四つ星のことだそうで,本作の東西南北4人のアイドルユニットを象徴する言葉のようだ。
https://trapezium-movie.com/

 

2024年61日(土)

立川立飛TOHOシネマズ 『青春18×2 君へと続く道』
私のパートナーは台湾人で少し映画業界にも関りがあった。本作には知人・友人が何人か関わっている。仲の良い友人は撮影現場の通訳として参加,主人公の学生時代の友人で一緒に会社を立ち上げた人物を演じるフィガロ・ツェンさんは,15年前に来日した時に一度お会いしたこともある。まあ,それはともかく私的には清原果耶さんが目当て。彼女の初(?)主演作『宇宙でいちばんあかるい屋根』と同じ藤井道人監督作品というのも期待が持てます。また,作品のウェブサイトによると監督の祖父が台湾出身で,自らも台湾への留学経験があるという。そういう意味でも,また主人公が台湾の俳優で現地のスタッフがちゃんと参加していることもあり,台湾映画の雰囲気をしっかりと味わえる作品。果耶さん演じるアミが台南の日本人が経営するカラオケで働くことになり,そこで出会った主人公のバイクに二人乗りをさせてもらうシーンで,「台湾映画みたい」というシーンがとてもいい。また,あえて台湾で岩井俊二の『Love Letter』を二人で観るシーンも泣かせます。私の観たスクリーンは座席の少ないところだったこともあり満席で,しかも若い観客が多かったので,何となく泣くのを遠慮してしまったが,本格的に泣くことができる映画だった。ストーリーとしてはオーソドックスだが,こういう映画が撮り続けられるというのは重要だと思う。
そして何より清原果耶さんの素晴らしいこと。また彼女が演じるアミに会うために観てみたい。
https://happinet-phantom.com/seishun18x2/

 

2024年62日(日)

府中TOHOシネマズ 『からかい上手の高木さん』
本作は山本崇一朗の漫画が原作で,アニメを子どもたちと見ていた。原作本は持っていないが,主人公である西方君と高木さんが結婚して娘と暮らす未来を描いた『からかい上手の元高木さん』という別の人が描いたコミック本がうちにある。原作は映画化もされ,それも娘と一緒に観に行ったが,いまだに実写映画に抵抗のある娘は当初,本作は観たくないといっていた。しかし,後日映画館で本予告を観てからは印象が変わったようで,観に行くことになった。私も永野芽郁が演じるその後の高木さんが予告編で非常に魅力的に見えたので,私自身も楽しみにしていた。『元高木さん』では,西片が体育教師になるという未来像だが,本作では結婚する前を描く。高橋文哉という俳優は初めて見たが,予告編では実写版ドラマをひきずってか,ちょっとひ弱な印象を持った。『元高木さん』で描かれる大人の西片はそこそこマッチョなのだ。しかし,実際に本編をみると体もしっかりしていて,顔もなかなかハンサム。しかし,しゃべり方が少し作りすぎな気はした。いずれにせよ,大人の高木さんを演じる永野芽郁さんは非常に魅力的で,そして原作ファンをも裏切らない(?)高木さんを演じていたと思う。私は原作を最後まで読んでいないので何とも言えないが,この映画は西片と高木さんの心情を語りすぎだと思う。それは前日に観た『青春18×2 君へと続く道』とも共通しているが,確かに観る者は登場人物の心情を知りたい。しかし,全部知らせてしまったら観る者の想像の自由を奪ってしまうし,そもそも原作の魅力はそこを明確には描かないことにあるのだと思う。そういう意味では以前ここでも紹介した杉田協士監督作品はあまりにも登場人物の心情を言葉としては表現していないので,観る者にはある程度のストレスを与えるが,その分自由な想像力を与えるものであり,対照的だといえる。
https://takagi3-movie.jp/

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